厚生労働省の既存添加物名簿には、カラメルIからカラメルIVまで4種類のカラメル色素が載っています。分かれ目は、糖類を熱処理するときに亜硫酸化合物やアンモニウム化合物を加えるかどうかです。米国FDAは、4-メチルイミダゾール(4-MEI)ができるのはこのうちカラメルIIIとIVの製造時で、カラメルIとIIは4-MEIを含まないと説明しています。
この記事では、カラメル色素がどのように4種類に分けられるのかと、4-MEIについて国際機関や海外当局がどう整理しているのか、そして日本の表示ではどう見えるのかを、公表されている資料にもとづいて整理します。危険か安全かを断定する記事ではなく、健康上の判断や治療の助言でもありません。実際に利用した体験ではなく、公開されている情報にもとづく整理です。
カラメル色素とは 食品を褐色に色づける着色料
カラメル色素は、でん粉加水分解物や糖蜜、糖類といった食用炭水化物を熱処理してつくる着色料です。日本では既存添加物として扱われています。既存添加物は、平成7年の食品衛生法改正で設けられた区分です。使う場合は容器包装の原材料欄に表示されます。
家庭で砂糖を焦がしたものと同じ名前で呼ばれるため混同されがちですが、添加物としてのカラメル色素には、製造工程で別の物質を加えるものがあります。この違いが、次に説明する4種類の分かれ方につながっています。
カラメルI〜IVの違い 分かれ目は「亜硫酸化合物」と「アンモニウム化合物」
既存添加物名簿の定義では、熱処理の際に亜硫酸化合物とアンモニウム化合物を加えるかどうかで4つに分けています。英名は名簿に併記されているものです。
| 種類(名簿の英名) | 亜硫酸化合物 | アンモニウム化合物 | 4-MEIとの関係(FDAの説明) |
|---|---|---|---|
| カラメルI(Plain caramel) | 加えない | 加えない | 4-MEIを含まない |
| カラメルII(Sulfite caramel) | 加える | 加えない | 4-MEIを含まない |
| カラメルIII(Ammonia caramel) | 加えない | 加える | 製造時に4-MEIができる |
| カラメルIV(Sulfite ammonia caramel) | 加える | 加える | 製造時に4-MEIができる |
FDAのQ&Aによると、カラメルIIIとIVは量でみて最もよく使われている着色用の添加物です。同じQ&Aには、製品中の4-MEIを減らす工夫をしているメーカーの例があることも書かれています。
4-メチルイミダゾール(4-MEI)は何と言われているのか
4-MEIについては、いくつかの機関が別々の観点から整理しています。動物試験、有害性(ハザード)の分類、暴露量にもとづく評価、州独自のリスク水準と、それぞれが答えている問いは違います。
| 機関・時期 | 内容 | 読み方 |
|---|---|---|
| 米国国家毒性プログラム(NTP、2007年) | 2年間の試験で、マウスでは特定の肺腫瘍の発生率が上昇。ラットでは発がん性の結論は出なかった | 試験の量は、人の推定摂取量をはるかに超えるとFDAが説明している |
| 国際がん研究機関(IARC) | モノグラフ101巻で4-MEIを2B(ヒトに対して発がん性がある可能性がある)に分類 | 物質の有害性(ハザード)についての分類 |
| 欧州食品安全機関(EFSA、2011年・2012年) | カラメル色素由来の4-MEIの暴露について、欧州の人々に懸念はないと結論。4-MEIは遺伝毒性を示さないとみられる。マウス試験の中間用量(体重1kg当たり1日80mg)を無毒性量とみなせるとした | 暴露量と試験条件を比べた評価 |
| 米国FDA(Q&A、2020年3月更新版) | 食品中で想定される濃度では、差し迫った、または短期的な健康リスクがあると考える理由はない。4-MEIを理由に食事を変えるよう勧めてはいない。カラメルIII・IVの4-MEI上限の設定も含めて検討を続けている | 短期的なリスクについての見解で、長期の安全を断定したものではない |
| 米国カリフォルニア州 | 州の制度(Proposition 65)で、4-MEIの「著しいリスクのない水準」を1日29マイクログラムと算定 | 州独自の計算にもとづく水準で、日本や国際機関の基準ではない |
FDAはその後、2018年にカラメルIII・IV由来の4-MEIの暴露評価を公表しています。2020年3月にはNTPがラットでの多世代の生殖発生毒性試験の結果を公表し、高用量で影響がみられましたが、その用量は発がん性試験と同程度で人の推定摂取量をはるかに超えるものだったとFDAは説明しています。
もうひとつ押さえておきたいのは、4-MEIがカラメル色素だけの問題ではない点です。FDAは、4-MEIはコーヒー豆の焙煎や肉を焼くといった通常の加熱調理でもできると説明し、食品から完全になくすことは現実的でないとしています。
ADI(一日摂取許容量)と規格について
FAOとWHOの合同食品添加物専門家会議(JECFA)はカラメル色素を種類ごとに評価しています。JECFAの添加物データベースでは、たとえばカラメルIV(INS 150d)は1985年の評価でADIが体重1kg当たり0〜200mgとされています(2026年10月5日確認)。ほかの種類の評価は、同じデータベースの最新版で確認してください。
日本の食品表示では、どう見えるのか
着色料は、用途名の併記が必要な添加物のひとつです。消費者庁の資料でも、物質名と用途名を一緒に書く例として「着色料(カラメル、カロテン)」が示されています。原材料欄では「着色料(カラメル)」のように書かれます。
この表示だけでは、カラメルI〜IVのどれが使われているかは分かりません。知りたいときは、消費者庁の資料が案内するとおり、容器包装に書かれた表示責任者に問い合わせる方法があります。米国でも、カラメルIII・IVを使った食品の原材料欄に種類を書く義務はないとFDAは説明しています。
| 項目 | 日本 | 米国(FDAの説明) |
|---|---|---|
| 原材料欄の書き方 | 「着色料(カラメル)」など用途名を併記 | 種類(クラス)を書く義務はない |
| I〜IVの区別 | 表示からは分からない | 表示からは分からない |
| 知りたいとき | 表示責任者へ問い合わせる | (制度が異なるため日本の表示には当てはめない) |
「無添加」「着色料不使用」の表示との関係
消費者庁の啓発資料では、「着色料無添加」は着色料だけでなく、着色料と似た働きを持つ原材料や添加物(クランベリー抽出エキスなど)も使っていない場合に表示できる、という例が示されています。カラメル色素を使っていないか確かめたいときは、原材料欄に「着色料(カラメル)」「カラメル色素」がないかを見ます。
消費者庁は2022年3月30日に「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」を公表し、食品表示基準の表示禁止事項に該当するおそれが高い表示を10類型に整理しました。類型1は、何が無添加なのか分からない単なる「無添加」の表示です。表示の見直しのための経過措置は2024年3月末まででした。「着色料不使用」でも、別の添加物が使われていることはあります。詳しい考え方は、「無添加」の表示には決まりがある、という話と「無添加」表示の法的根拠は?にまとめています。
カラメル色素はどれも既存添加物ですが、IIIとIVはアンモニウム化合物を加える製法です。区分の名前から製法までは読み取れません。「既存添加物だから安全」「化学的な工程を含むから危険」という短絡はどちらも成り立たず、基準や評価にもとづいて量と種類を見る、というのがこの記事の立場です。
選ぶときの確認手順
カラメル色素が使われているかどうかは商品ごとに違うので、原材料欄で一つずつ確認します。
- 原材料名の欄で「着色料(カラメル)」「カラメル色素」の有無を確認する
- 気になる理由が4-MEIなら、原材料欄では種類が分からないことを踏まえて、必要なら表示責任者へ問い合わせる
- 「着色料不使用」と書かれていても、別の添加物が使われていないかを原材料欄で確認する
- 摂取量が気になる場合は、飲料やスープなど日常的に量をとる食品から見直す
よくある質問
カラメル色素はすべて発がん性があるのですか
そうは整理されていません。話題になっているのは、カラメルIIIとIVの製造時にできる4-MEIで、FDAはカラメルIとIIは4-MEIを含まないとしています。IARCは4-MEI自体を2Bに分類していますが、FDAは食品中で想定される濃度では差し迫った、または短期的な健康リスクを考える理由はないとしています。
どのカラメルが使われているか、表示から分かりますか
通常の原材料表示では、I〜IVの区別は分かりません。知りたい場合は、表示責任者(製造者など)への問い合わせが案内されています。
コーヒーや焼いた肉にも4-MEIはありますか
FDAは、コーヒー豆の焙煎や肉を焼く加熱調理でも4-MEIができることがあると説明しています。カラメル色素だけが原因ではなく、食品から完全になくすことは現実的でないともしています。
プリンのカラメルソースもカラメル色素ですか
砂糖を煮詰めたカラメルソースがどう表示されるかは、商品ごとに表示を見るのが確実です。原材料欄に「着色料(カラメル)」があるかを見て、分からなければ表示責任者に確認してください。
「着色料不使用」なら、カラメル色素は入っていませんか
消費者庁の啓発資料では、着色料と似た働きを持つ原材料や添加物も使っていない場合に「着色料無添加」と表示できる例が示されています。それでも原材料名の欄そのものを確認するのが確実です。
海外の商品なら、ラベルでカラメルの種類が分かりますか
米国については、FDAが原材料欄にカラメル色素の種類を書く義務はないと説明しています。米国のラベルでも4-MEIの有無は読み取れません。
FDAは4-MEIの量に上限を設けていますか
FDAのQ&A(2020年3月更新版)では、カラメルIII・IVに含まれる4-MEIの上限設定も含めて対応を検討していると書かれています。上限値そのものは示されていません。
妊娠中や子どもは避けたほうがよいですか
この記事は個別の健康判断を示すものではありません。気になる場合は、かかりつけの医師や管理栄養士などの専門家にご相談ください。食品表示の読み方については、妊娠中・授乳中に気をつけたい食品表示の見方も参考になります。
まとめ
カラメル色素は、亜硫酸化合物とアンモニウム化合物を加えるかどうかでI〜IVの4種類に分かれ、4-MEIができるのはアンモニウム化合物を加えるIIIとIVの製造時です。NTPの動物試験、IARCの2B分類、EFSAやFDAの暴露量にもとづく評価、カリフォルニア州の水準は、それぞれ別の問いに答えています。日本の表示では「着色料(カラメル)」と書かれ、I〜IVの区別は表示から分かりません。「無添加」や「着色料不使用」の言葉だけで判断せず、原材料名の欄を確認するという基本は変わりません。添加物一般の役割は保存料・着色料・化学調味料、それぞれ何のために使われているのかで整理しています。
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- 米国FDA「Questions & Answers About 4-MEI」(2020年3月27日更新版、Internet Archive保存版) https://web.archive.org/web/2024/https://www.fda.gov/food/food-additives-petitions/questions-answers-caramel-coloring-and-4-mei
- 日本食品化学研究振興財団「既存添加物名簿、同名簿収載品目リスト」(厚生労働省の既存添加物名簿を収載) https://www.ffcr.or.jp/tenka/list/post-12.html
- Genes and Environment(2016年)「Genotoxicity assessment of 4-methylimidazole: regulatory perspectives」 https://www.ebi.ac.uk/europepmc/webservices/rest/PMC5088675/fullTextXML
- 消費者庁「食品添加物表示に関するマメ知識」(PDF) https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/food_additive/assets/food_labeling_cms204_260401_04.pdf
- 消費者庁「表示を作成する際に注意すべき10類型」(PDF) https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/food_additive/assets/food_labeling_cms204_220701_03.pdf
- 消費者庁「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」啓発資料(PDF) https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/food_additive/assets/food_labeling_cms204_221122_01.pdf
- 消費者庁「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」(令和4年3月30日、PDF) https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/assets/food_labeling_cms201_220330_25.pdf
- WHO JECFA database「CARAMEL COLOUR, Class IV」(2026年10月5日確認) https://apps.who.int/food-additives-contaminants-jecfa-database/Home/Chemical/1668