有機JASマークのない農産物、畜産物、加工食品に「有機」「オーガニック」と表示することは、法律で禁止されています。一方の「無添加」は、消費者庁が令和4年3月30日に公表したガイドラインで、注意が必要な書き方が10の類型に整理された表示です。
片方は認証制度に基づく表示で、もう片方は事業者が任意で行う表示です。この違いを、農林水産省と消費者庁が公表している資料をもとに整理します。
出発点が違う二つの言葉
大まかに言えば、オーガニックは「どう作られたか」の話、無添加は「何を入れていないか」の話です。オーガニックは畑や飼育の段階からの生産方法を問うもので、無添加は加工の段階で何を加えなかったかを示すもの。着目している工程が違うため、片方を満たしていればもう片方も満たす、という関係にはなりません。
オーガニック(有機)は法律で決まっている
農林水産省の説明では、有機JASマークは、農薬や化学肥料などの化学物質に頼らないことを基本として自然界の力で生産された食品を表しています。マークを貼れるのは、登録認証機関の検査を受けて認証された事業者だけです。マークのない農産物、畜産物、加工食品に「有機」「オーガニック」の名称や、これと紛らわしい表示を付けることは法律で禁止されています。
対象になる品目
有機JASの区分は、有機農産物、有機加工食品、有機畜産物、有機飼料、有機藻類です。2022年10月1日からは、有機酒類にも有機JASマークを表示できるようになりました。認証を受けるには、農林水産省の登録を受けた登録認証機関に申請し、審査を受ける必要があります。
有機加工食品の基準
有機加工食品の規格は、日本農林規格JAS 1606:2024(2022年9月1日制定、2024年7月1日改正)です。主なルールを表にまとめます。
| 項目 | 規格の内容 |
|---|---|
| 有機でないものの割合 | 原材料(食塩・水を除く)と添加物(加工助剤を除く)の合計重量のうち、有機でない原材料と添加物の割合が5%以下。有機加工食品として格付された一般飲食物添加物と加工助剤は計算から除く |
| 有機でない原材料を使える場合 | 同じ種類の有機の原材料の入手が困難な場合に限る |
| 使える添加物 | 附属書Aの表A.1(有機酒類以外)、有機酒類は附属書Bの表B.1に掲載されたものに限る。使う場合は必要最小限度 |
| 使えない原材料 | 放射線照射が行われたもの、組換えDNA技術を用いて生産されたもの |
| 名称の表示 | 「有機○○」「○○(有機)」「オーガニック○○」「○○(オーガニック)」など |
| 原材料名の表示 | 有機の原材料に「有機」等の文字を付ける |
ここで見落とされがちな点があります。5%の枠には添加物も含まれ、有機加工食品でも表A.1に掲げられた添加物は使用できます。たとえばクエン酸は、pH調整剤として使う場合か、野菜・果実の加工品に使う場合に限って認められています。反対に、表A.1にないグリセリン脂肪酸エステルは、有機豆腐の消泡剤として使えないとされています。有機JASマークが付いていることと、添加物が一切入っていないことはイコールではありません。
海外のオーガニック認証(USDA Organicなど)がついた食品を取り寄せるときの見方は、iHerb(アイハーブ)で無添加・オーガニック食品やサプリを買うときに知っておきたいことで触れています。
無添加には食品表示基準上の特段の規定がない
一方の「無添加」は、食品表示基準に特段の規定がなく、事業者が任意で表示しているものです。保存料だけを使っていない商品も、着色料だけを使っていない商品も、同じ言葉で表現できてしまいます。
この分かりにくさを整理するため、消費者庁は令和4年3月30日に「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」を公表し、誤認を招きやすい書き方を10の類型に整理しました。対象を明示しない単なる「無添加」、食品表示基準にない用語を使った表示、同じ働きを持つ別の添加物や原材料を使いながらの不使用表示などが挙げられています。不使用表示を一律に禁止するものではなく、根拠を確認したうえで具体的に書くことを求める内容です。
比較表:紛らわしい四つの表示を並べる
| 表示 | 何を示すか | 公的な基準 | 確かめ方 |
|---|---|---|---|
| 有機・オーガニック | 生産方法(農薬や化学肥料などの化学物質に頼らないことを基本とする) | あり(有機JAS、登録認証機関の認証が必要) | 有機JASマークの有無 |
| 無添加・不使用 | 加工時に加えなかった添加物 | 食品表示基準に特段の規定なし(表示の考え方についてガイドラインあり) | 裏面の添加物欄と照らす |
| 特別栽培農産物 | 節減対象農薬の使用回数と化学肥料の窒素成分量を、それぞれ慣行レベルの5割以下に抑えた栽培 | 農林水産省のガイドライン(法令に基づく義務や認証制度ではない) | 栽培責任者・確認責任者の氏名と連絡先、節減の割合などの記載 |
| 自然派・ナチュラル | 商品ごとに異なる | 今回確認した公式資料に、食品全般での定義の記述はなし | 商品ごとの説明を読む |
ちなみに「無農薬」「減農薬」という表示は、特別栽培農産物のガイドラインで使わないことになっています。農林水産省のQ&Aによると、「無農薬」は残留農薬を一切含まないと受け取られて優良誤認を招いており、平成14年の総務省の調査では「無農薬」を「有機」より優良と誤認している消費者が6割以上いました。「減農薬」は、比べる基準や削減の割合がはっきりしないことが理由です。このガイドラインは、不特定多数の消費者に販売される農産物に適用されるもので、加工食品は対象外です。
重なるところ、すれ違うところ
- 有機JASマークが付いていても、表A.1で認められた添加物が使われていることはある
- 「無添加」と書かれていても、原材料が有機栽培かどうかは別の話
- どちらの表示もない商品が、実際には添加物の少ない作り方をしていることもある
言葉が付いているかどうかは確かめる手がかりにはなりますが、それだけで中身の優劣が決まるわけではありません。有機JASのように登録認証機関の認証があるものは第三者の確認を経ている一方、無添加は書いた事業者の説明を読む側が確かめる形になります。
化粧品の「オーガニック」は別に確かめる
ここまでは食品の話です。農林水産省の説明は、有機JASを有機食品の規格として扱っています。「有機」「オーガニック」の表示の規制の対象として農林水産省が挙げているのは農産物、畜産物、加工食品で、化粧品は挙がっていません(2026年10月5日確認)。化粧品の「オーガニック」は、商品ごとに根拠となる認証や基準を確かめてください。化粧品の認証マークの整理は、下の関連記事で扱っています。
選ぶときに使える考え方
栽培方法を重視したいとき 有機JASマークの有無を見る
加工時の添加物を減らしたいとき 裏面のスラッシュより後ろを見る
両方が気になるとき 有機JASマークと添加物欄の両方を確認する
言葉の印象だけで判断しない 「自然派」「ナチュラル」は商品ごとの説明を読む
よくある質問
Q. 有機JASマークがない商品に「オーガニック」と書いてあったら違反ですか。
有機JASマークのない農産物、畜産物、加工食品に「有機」「オーガニック」と表示することは法律で禁止されています。化粧品や雑貨は、農林水産省がこの規制の対象として挙げている品目には入っていません(2026年10月5日確認)。
Q. オーガニックなら添加物は入っていないと考えてよいですか。
いいえ。有機加工食品でも、規格の附属書Aにある表A.1(有機酒類は附属書Bの表B.1)に掲げられた添加物は、必要最小限度で使用できます。添加物の有無は、原材料表示で確認してください。
Q. 「無添加」と「オーガニック」の両方が書かれていたら、どこを見ればよいですか。
有機の表示は有機JASマークで、無添加の表示は裏面の添加物欄で、それぞれ別に確かめます。不使用表示のガイドラインは、保存料・着色料以外の添加物を使う食品に大きく「無添加」、小さく「保存料、着色料」と書く例を、過度に強調された表示(類型10)として挙げています。何が無添加なのかは、表示の対象を確かめる必要があります。
Q. 「特別栽培農産物」は有機とどう違いますか。
有機JASは、農薬や化学肥料などの化学物質に頼らないことを基本とする生産方法を、登録認証機関が認証する制度です。特別栽培農産物は、化学合成された農薬と肥料の使用を減らすことを基本とし、節減対象農薬の使用回数と化学肥料の窒素成分量をそれぞれ慣行レベルの5割以下にしたものです。農林水産省のガイドラインに沿った表示で、法令上の義務や認証制度ではありませんが、栽培責任者と確認責任者を表示する仕組みがあります。
Q. 農薬を使っていない特別栽培農産物は、どう表示されますか。
節減対象農薬を使わなかった場合は、「無農薬」ではなく「節減対象農薬:栽培期間中不使用」と表示します。節減した場合は「節減対象農薬:当地比 ○割減」のような書き方になります。
Q. 輸入品のオーガニック表示はどう見ればよいですか。
日本で「有機」と表示して販売する食品には、有機JASマークが必要です。有機JASの認証の区分には、同等性を活用して輸入を行う輸入業者も含まれています。手続きの詳細は、農林水産省の有機食品の検査認証制度のページで確認してください。
Q. 結局、どちらを優先して選べばよいですか。
目的によります。栽培方法まで含めて確かめたいなら有機JASマーク、加工時の添加物を減らしたいなら原材料表示。有機JASマークは生産・加工の方法を認証したもので、健康への効果を保証するものではありません。今回確認した農林水産省・消費者庁の資料にも、どちらかが優れているとする記述は見当たりません。
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有機の認証制度と、規定のない無添加表示との違いを押さえておくと、売り場で二つの言葉が並んでいても混同せずに商品を確かめられます。
まとめ
オーガニックは生産方法についての認証制度で、有機JASマークのない農産物・畜産物・加工食品には有機と表示できません。無添加は加工時に何を加えなかったかの話で、食品表示基準に特段の規定はなく、表示の考え方についてのガイドラインが示されています。有機加工食品でも表A.1で認められた添加物は使え、5%の枠には添加物も含まれます。無添加であっても原材料が有機とは限りません。二つを別のものとして見分けられるようになると、売り場の言葉に迷いにくくなります。
出典(いずれも2026年10月4日確認)
- 農林水産省「有機食品の検査認証制度」 https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/yuuki.html
- 農林水産省「有機JASについて教えてください」(消費者の部屋) https://www.maff.go.jp/j/heya/sodan/1707/02.html
- 財務省・農林水産省「日本農林規格 JAS 1606:2024 有機加工食品」(2022年9月1日制定、2024年7月1日改正) https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/attach/pdf/yuuki-438.pdf
- 農林水産消費安全技術センター(FAMIC)「有機JAS(有機加工食品に関するQ&A)」 https://www.famic.go.jp/hiroba/anzen_anshin_qa/enterprise_consultation_case/yuuki_kakou/
- 農林水産省「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」 https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/tokusai_a.html
- 農林水産省「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」(平成19年3月23日改正、PDF) https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/pdf/tokusai_03.pdf
- 農林水産省消費・安全局表示・規格課「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン Q&A」(平成20年6月) https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/pdf/tokusai_qa.pdf
- 消費者庁「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」(令和4年3月30日) https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/assets/food_labeling_cms201_220330_25.pdf