日本衛生材料工業連合会と日本清浄紙綿類工業会がまとめた技術指針(令和3年5月13日改正)は、「基布含浸型化粧品」の例として「乳幼児のおしりふき」を挙げています。赤ちゃんのおしりをふく用途をうたうおしりふきは、雑貨ではなく化粧品として扱われるということです。ベビーソープも化粧品か医薬部外品なので、二つは同じ薬機法の枠に入ります。
では「無添加」をうたうベビー用品で何を見ればよいのか。この記事では、ベビーソープ・おしりふき・ウエットティシュ・哺乳用具・肌着の法律上の分類の違いを、公開されている情報にもとづいて整理します。
月齢・発達段階やアレルギーの有無によって適したものは異なります。ベビー用品のほか、離乳食・幼児食の進め方や特定の食材を与える時期については、自己判断せず、かかりつけの小児科医・お住まいの保健センター・管理栄養士に相談してください。
ベビー用品は法律上いくつかの区分に分かれる
ひとくちに「ベビー用品」といっても、根拠になる法律は品目ごとに異なります。おしりふきについては、乳幼児向けをうたうかどうかで区分が分かれる点に注意が必要です。
| 品目 | 法律上の区分 | 成分・品質表示の根拠 |
|---|---|---|
| ベビーソープ・全身洗浄料(薬用でないもの) | 化粧品 | 薬機法の化粧品表示(第61条)と厚生省(当時)の告示・通知による全成分表示 |
| 薬用ベビーソープ(薬用石けん) | 医薬部外品 | 業界の自主基準による全成分表示(法的義務ではない) |
| 乳幼児向けをうたうおしりふき | 化粧品(基布含浸型化粧品) | 化粧品と同じ全成分表示。家庭用品品質表示法は対象外 |
| 乳幼児向けをうたわないウエットティシュ | 雑貨 | 日本衛生材料工業連合会の自主基準(成分名は全成分で表示) |
| 哺乳瓶・乳首等の哺乳用具 | 雑貨工業品 | 家庭用品品質表示法の対象品目 |
| ベビーフード | 食品 | 食品の表示ルール(この記事では扱いません) |
同じ「無添加」という言葉でも、どの法律や基準のもとで表示されているかは品目ごとに違います。
ベビーソープは化粧品か医薬部外品
ベビーソープや全身洗浄料は、製品によって薬機法上の「化粧品」か「医薬部外品」にあたります。どちらに当たるかは製品ごとに違うため、容器の表示で確かめてください。
化粧品の場合、配合しているすべての成分を表示する「全成分表示」が求められます。薬機法第61条の条文が直接定めているのは厚生労働大臣が指定する成分の名称などで、全成分表示は厚生省(当時)が平成12年9月29日に告示を公布して導入した制度です。表示の読み方や「無添加」表示との関係は化粧品の全成分表示の記事で解説している内容がそのまま当てはまります。
薬用石けんなどの医薬部外品は、全成分表示が法的義務ではありません。日本石鹸洗剤工業会は平成18年4月1日から自主基準として薬用石けんの成分表示を行っており、表示する成分は原則として承認書に記載された全成分です。成分の表示名称は日本化粧品工業会など医薬部外品関係の団体が共通のリストを使っています。企業秘密にあたる成分は「他n成分」とまとめて表示できる決まりもあります。
おしりふきは「基布含浸型化粧品」として化粧品の扱い
不織布などの基布に液をしみこませた製品のうち、肌の清浄を目的とするものは「基布含浸型化粧品」と呼ばれます。業界の技術指針が挙げる例には、乳幼児のおしりふきのほか、メイククレンジングシート、洗顔ペーパー、汗拭きシート、ボディシートなどがあります。
技術指針によると、乳幼児のおしりに部位を限定して清浄・清拭に使う旨をうたう場合は医薬部外品にあたらないという整理が、昭和63年と平成14年の事務連絡で示されてきました。清浄用の綿類は使用部位を限定せずに基布含浸型化粧品として取り扱う、とも説明されています。
化粧品として扱われるので、おしりふきにも次のようなルールがかかります。
- 直接の容器または被包に薬機法第61条の表示事項を記載する
- 原則として配合するすべての成分の名称を表示する(平成12年9月29日 医薬発第990号)
- 品質面では化粧品基準(厚生省告示第331号)への適合が目標になる
- 業界は原産国名、問い合わせ先、基布の寸法(mm単位)などの表示も求めている
技術指針が示す品質目標には微生物の基準もあります。
| 項目 | 品質目標(技術指針) |
|---|---|
| 細菌数 | 試料1gあたり1,000個を超えない |
| 真菌数 | 試料1gあたり100個を超えない |
| 大腸菌・黄色ブドウ球菌・緑膿菌 | 検出されない |
つまり乳幼児向けのおしりふきの「無添加」表示は、全成分表示とセットで確かめられる表示です。裏面の全成分を見れば、うたわれている成分が本当に入っていないかを自分で照合できます。
雑貨のウエットティシュとの違い
ウエットティシュには化粧品ではなく雑貨として売られているものもあります。日本衛生材料工業連合会の「ウエットティシュ」の表示・広告自主基準は、雑貨のウエットティシュについて乳幼児(24ヵ月以内)への使用を薦める字句・イラスト・図案・写真を表示しないよう定めています。用途の範囲も「おしりふき(乳幼児を除く)」です。
雑貨のウエットティシュにも、同じ自主基準で成分名を全成分で書く枠内表示が定められています。ただし薬機法にもとづく表示ではなく、業界の自主基準です。
「赤ちゃん用」と書かれた商品が化粧品か雑貨かは、容器に「化粧品」の記載や全成分の表示があるかで確認できます。迷ったときはメーカーの問い合わせ先に聞くのが確実です。
おしりふきは家庭用品品質表示法の対象外
紙製品なら家庭用品品質表示法の対象では、と思うかもしれません。消費者庁が公開している雑貨工業品の対象品目を見ると、紙製品として指定されているのは「ティシュペーパー及びトイレットペーパー」だけです。消費者庁の手引きには、対象範囲について次のように書かれています。
「対象となる範囲は、ティシュペーパー及びトイレットペーパーに限られており、タオルペーパー、クッキングペーパー等については対象となっていない」
表示項目も、方形のもの(ティシュペーパー)と巻取りのもの(トイレットペーパー)を前提に寸法や枚数などが決められています。消費者庁の対象外品目の一覧には「ベビー用品(抱っこひも、おしゃぶり、よだれ掛け等)」という区分もあります。おしりふきの成分表示は、この法律ではなく化粧品のルール(雑貨のウエットティシュなら業界の自主基準)によって行われています。
哺乳瓶などの哺乳用具は対象品目になっている
同じベビー用品でも、哺乳瓶や乳首などの「哺乳用具」は、家庭用品品質表示法の雑貨工業品の対象品目に掲げられています。素材(ガラス製・合成樹脂製など)ごとに表示すべき項目が決められており、法律にもとづく表示ルールがある品目です。ベビー用品というくくりでも、法律上の扱いは品目ごとに個別に決まっています。
肌着やよだれ掛けには、別の法律の化学物質規制がある
表示のルールがない=何も規制がない、というわけではありません。ベビー用の繊維製品には、「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」(家庭用品規制法)にもとづく化学物質の基準が設けられています。この法律は表示ではなく、含有量そのものを規制する仕組みです。
代表的なのがホルムアルデヒドで、生後24か月以下の乳幼児用のおしめ、おしめカバー、よだれ掛け、下着、寝衣、手袋、くつした、中衣、外衣、帽子、寝具については、所定の試験法で吸光度差0.05以下または16ppm以下という基準が定められています。一般の下着・寝衣・手袋・くつした・たびの基準は75ppm以下なので、乳幼児用はかなり厳しい水準です。
| 対象 | ホルムアルデヒドの基準 |
|---|---|
| 生後24か月以下の乳幼児用の繊維製品(おしめ、よだれ掛け、寝具等) | 吸光度差0.05以下または16ppm以下 |
| 一般の下着・寝衣・手袋・くつした・たび | 75ppm以下 |
この法律はホルムアルデヒド以外にも、有機水銀化合物、トリフェニル錫化合物、ディルドリン(原文の表記は「デイルドリン」)など21の物質群について、対象となる家庭用品ごとに基準を定めています。ベビー用の衣類や寝具は、「無添加」の表示があるかどうかとは別に、含有量の規制をすでに受けています。
よく見かける「無添加」対象成分
- パラベン(防腐剤の一種)
- アルコール(エタノール)
- 香料
- 着色料
- 界面活性剤の種類(石けん系・合成系など)
赤ちゃん向けには、これらの成分を避けた設計の製品が多く見られます。ただ、無添加であることと低刺激であることは同じではありません。対象になっていない別の成分が肌に合わないこともあります。
選ぶときに確認したいポイント
- 「無添加」の対象成分が具体的に書かれているか(パラベン無添加、アルコールフリー等)
- 容器の全成分表示で、うたわれている成分が入っていないかを照合する
- おしりふきは「化粧品」の記載があるか、乳幼児向けの表示があるかを見る
- 薬用(医薬部外品)の製品は、企業秘密成分が「他n成分」とまとめられている場合がある
- 新しい製品を使い始めるときは、目立たない部分に少量試してから全体に使う
よくある質問
おしりふきに全成分表示の義務はない?
乳幼児向けをうたうおしりふきは基布含浸型化粧品なので、化粧品として原則すべての成分の名称を表示します。乳幼児向けをうたわない雑貨のウエットティシュは薬機法の対象ではありませんが、日本衛生材料工業連合会の自主基準で成分名を全成分で表示する枠内表示が定められています。
「赤ちゃん用」のおしりふきが化粧品かどうかはどう見分ける?
容器に「化粧品」の記載や全成分の表示があるかを確認してください。雑貨のウエットティシュは、業界の自主基準で乳幼児(24ヵ月以内)への使用を薦める表示ができないことになっています。判断がつかない場合は、表示されている問い合わせ先に確認するのが確実です。
化粧品扱いのおしりふきにはどんな品質の基準がある?
業界の技術指針では、化粧品基準(厚生省告示第331号)への適合のほか、細菌数が試料1gあたり1,000個以下、真菌数が100個以下、大腸菌・黄色ブドウ球菌・緑膿菌が検出されないことを品質目標にしています。
「無添加」と書かれたおしりふきなら肌トラブルは起きない?
そうとは限りません。無添加表示は特定の成分が入っていないという事実を示すもので、すべての肌に合うことを保証するものではありません。赤ちゃんの肌に異常が出た場合は使用を中止し、小児科や皮膚科に相談してください。
ベビーソープとおしりふき、どちらが厳しい基準で作られている?
乳幼児向けのおしりふきも薬用でないベビーソープも同じ化粧品の扱いで、全成分表示や化粧品基準のルールは共通です。表示ルールの違いは製品の安全性の優劣を示すものではないので、一律に比べることはできません。
哺乳瓶の「無添加」表示にはルールがある?
哺乳用具自体は家庭用品品質表示法の対象品目ですが、この法律が定めているのは素材などの品質表示項目で、「無添加」という表示そのものを直接定めたものではありません。
ベビーフードの「無添加」表示もこの記事と同じルール?
ベビーフードは食品なので、この記事で扱った化粧品・雑貨とは別の枠組みです。詳しくは無添加ベビーフードの記事で解説しています。
ベビー服や肌着の「無添加」にはどんな裏付けがありますか
繊維製品の場合、表示のルールではなく含有量の規制があります。家庭用品規制法により、生後24か月以下の乳幼児用のおしめ・よだれ掛け・下着・寝衣・寝具等は、ホルムアルデヒドが吸光度差0.05以下または16ppm以下でなければなりません。一般の下着等の基準(75ppm以下)より厳しい水準です。「無添加」という言葉の有無にかかわらず、この基準は適用されます。
表示のルールがない品目は安全性も確認されていないのですか
そうとは限りません。表示の義務と、含有量や製造の規制は別の仕組みです。繊維製品には家庭用品規制法による物質ごとの基準があります。表示がないことは「何も守られていない」ことを意味しませんが、その製品が何を使っていないかを確認する手段が限られる、という意味ではあります。
まとめ
乳幼児向けをうたうおしりふきは基布含浸型化粧品で、ベビーソープと同じ薬機法の化粧品の枠に入ります。全成分表示があるので、「無添加」とうたわれた成分を自分で照合できます。薬用ベビーソープ(医薬部外品)は業界の自主基準による全成分表示です。乳幼児向けをうたわないウエットティシュは雑貨で、業界の自主基準にもとづいて表示されています。家庭用品品質表示法の対象はティシュペーパーとトイレットペーパーだけで、おしりふきは対象外です。表示を見るときは、まず「化粧品」「医薬部外品」「雑貨」のどれに当たるかを確かめると読み違えが減ります。
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出典(いずれも2026年10月4日確認)
- 消費者庁「家庭用品品質表示法 ティシュペーパー及びトイレットペーパー」https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/household_goods/guide/zakka/zakka_18.html
- 消費者庁「家庭用品品質表示法 対象品目一覧」https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/household_goods/list
- 消費者庁「家庭用品品質表示法の対象外品目について」https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/household_goods/faq/faq_05.html
- 厚生労働省「有害物質を含有する家庭用品の規制基準概要(21物質群)」https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000179221.pdf
- 日本衛生材料工業連合会・日本清浄紙綿類工業会「乳幼児のおしり等を対象とする基布含浸型化粧品」の技術指針と表示のQ&A(令和3年5月13日改正)https://www.jhpia.or.jp/standard/wet_wiper/img/wetwiper_standard04-2.pdf
- 日本衛生材料工業連合会「ウエットティシュ」の表示・広告自主基準 https://www.jhpia.or.jp/standard/wet_wiper/img/wetwiper_standard04.pdf
- 日本石鹸洗剤工業会「医薬部外品(薬用石けん)の成分表示」https://jsda.org/0c/0info/annex/33_File.pdf
- 日本化粧品工業会「化粧品の成分表示の趣旨説明」https://www.jcia.org/user/business/ingredients/cmtexplain
- e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(昭和35年法律第145号)https://elaws.e-gov.go.jp/api/1/lawdata/335AC0000000145