農林水産省の資料(令和7年2月17日)は、人用であれば化粧品にあたる物を、動物用では「いわゆる雑品」として扱うと説明しています。ペット用シャンプーには人間の化粧品にあたる区分がなく、効能のうたい方の線引きは日本ペット用品工業会のガイドラインが具体例で示しています。このガイドラインは2017年(平成29年)7月に策定され、現在は2025年9月5日更新の改訂版が掲載されています。
この記事では、ペット用シャンプー等の法律上の位置づけと、「無添加」表示を読むときに押さえておきたい点を、業界団体のガイドラインなど公開されている情報にもとづいて整理します。
ペットの体質・皮膚の状態・年齢によって合う製品は異なります。新しいシャンプーを使うときは、まず少量で様子を見て、赤み・かゆみ・フケなどの異常が見られたら使用を中止し、かかりつけの獣医師に相談してください。この記事は法律上の扱いについての解説であり、特定の症状の治療や予防を保証するものではありません。
ペット用品には「化粧品」という区分がない

薬機法(医薬品医療機器等法)は、人の「化粧品」を「人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物」と定義しています。定義の中に「人の身体」とあるため、化粧品という区分は人間用にしかなく、ペット用の商品には存在しません。
そのため、ペット用のシャンプー・リンス・コンディショナー・皮膚クリーム・ローション・イヤークリーナー・ウェットティッシュなどは、「雑品」「医薬部外品」「医薬品」のいずれかとして扱われます。農林水産省の資料は「雑品」、業界団体や一般の記事では「雑貨」と書くことが多く、この記事では「雑品(雑貨)」と表記します。
| 区分 | 目的・例 | 表示できること |
|---|---|---|
| 雑品(雑貨) | 洗浄など物理的な作用で被毛や皮膚を清潔に保つ。人用の化粧品にあたる物 | 病名・症状・治療・予防などを表記・暗示しない範囲。インターネット上の広告も同じ |
| 医薬部外品 | あせも・ただれ等の防止、体臭の防止、脱毛防止・育毛・除毛、のみ・蚊などの防除のうち作用が緩和なもの。例はノミ取り首輪・虫除けスプレー | 承認を受けた範囲の効能効果 |
| 医薬品 | 疾病の診断・治療・予防など | 承認を受けた効能効果 |
農林水産省の資料では、抗生物質・消毒剤・消炎剤といった医薬品の成分や、駆除剤・永久染毛剤といった医薬部外品の成分を含む外用品は、医薬品等と判断されます。一方、化粧品基準(平成12年9月29日 厚生省告示第331号)にもとづき化粧品に配合できる成分は、動物用でも医薬品的な成分とは判断しないとされています。医薬品の成分を含む製品や効能をうたいたい製品は、動物用医薬品等としての許可などが必要です。
根拠になっているガイドラインと通知
ペット用シャンプー等の表記については、一般社団法人日本ペット用品工業会が「ペット用シャンプー等の薬事に関する適切な表記のガイドライン」を公表しています。平成29年7月に農林水産省の指導のもとで策定され、現在掲載されているのは改訂版(最終更新2025年9月5日)です。農林水産省消費・安全局長通知「動物用医薬品等の範囲に関する基準」(平成26年11月25日付け26消安第4121号)の考え方を、シャンプー等の具体的な表現に当てはめて解説しています。作成にあたっては、ペットフード公正取引協議会が作成したガイドラインと、日本化粧品工業連合会の「化粧品等の適正広告ガイドライン」も参考にされています。
ガイドラインは薬機法の観点から作られたもので、景品表示法などの関連法令は別に守る必要があると明記されています。工業会は、ガイドラインを逸脱した表記の製品は法的な指導の対象になる可能性があるとしています。ガイドライン本文では、逸脱した広告は未承認医薬品の広告として薬機法第68条違反と判断される可能性があり、口頭での製品紹介も対象になると説明しています。
「医薬品的な表記」と判断される具体例
ガイドラインには、パッケージや広告で使うと医薬品的な表記と判断される例と、ただちにはそう判断されない例が多く挙がっています。病名・症状・治療・予防・改善や、これらに類する表現は表記できません。
| 区分 | NGとされる表記の例 | OKとされる表記の例 |
|---|---|---|
| 病名・症状 | 皮膚病、炎症、患部に使用してください | (病名・症状に触れない) |
| アレルギー | 単に「〇〇アレルギー」とだけ書く | 「〇〇成分を含まないことで、〇〇アレルギーに配慮」と具体的に説明を添える |
| 被毛・皮膚への作用 | 傷んだ被毛(修復/回復/再生)、爪の(修復/回復/再生)、健常肌に整える | 健康/健常な肌をキープ、健やかに保つ、コート成分でつや・はりを与える |
| 肌質 | 敏感肌専用、敏感肌に悩む犬に | 敏感肌用、乾燥肌用(ドライスキン用/ドライスキン向き) |
| 殺菌・消毒・抗菌 | 殺菌、消毒(不可)。抗菌、除菌(原則不可) | 雑菌を拭き取る(ウェットティッシュ等で粘膜以外を単に拭き取る場合) |
| 体臭・においケア | 体臭を抑える、体臭が気になる愛犬に、悪臭の発生をおさえる | ニオイを拭き取る、ペットのにおいが香料に取り込まれることで快適な香りに変わる |
共通しているのは、洗浄・拭き取りなど物理的な作用の範囲にとどめれば医薬品的な表記とは判断されないという考え方です。体の構造や機能そのものに変化を起こすかのような表現や、治療・予防を連想させる表現は、承認を受けた医薬品・医薬部外品でなければ使えません。
「殺菌」「除菌」は用途によって条件が違う
殺菌・滅菌・消毒などの語は、農林水産省の資料でも疾病の予防を暗示する医薬品的な表示の例に挙がっています。ただし、どこに使う製品かによって扱いが分かれます。
| 用途 | 扱い |
|---|---|
| シャンプー等、体に使う製品 | 殺菌・消毒は予防を意図する医薬品的な表記で不可。抗菌・除菌も原則不可 |
| ウェットティッシュ等で健康な被毛や手足等(粘膜以外)を単に拭き取る場合 | 効能効果を明示も暗示もしなければ「菌を拭き取る」は可。使える語は「雑菌」と「菌」のみで、ばい菌・病原菌・具体的な病原体名は不可 |
| 床・ケージ等の環境に使う製品 | 単なる汚れ取りであることが明らかで、予防や病原体名等を暗示しなければ、除菌・抗菌でも雑品として判断できる |
このガイドラインには「無添加」という表示そのものの定めはありません。あくまで医薬品的な効能効果の表記かどうかを判断する基準です。「無添加」をうたう場合も、その成分を配合していないという事実の表示にとどめ、効能や安全性を保証する書き方(「無添加だから安心」「アレルギーが起きない」等)にしないという考え方は、人間の化粧品と共通しています。
「無添加」の対象成分は製品ごとに確認する
ペット用シャンプーの「無添加」表示では、次のような成分名を目にすることがあります。
- パラベン(防腐剤の一種)
- 合成香料
- 合成着色料
- 鉱物油
- シリコン
- ラウリル硫酸系の洗浄成分
どの成分を対象にしているかは公的な資料で決まっているものではなく、製品ごとに違います。パッケージやメーカーの公式サイトで、何が配合されていないのかを確認してください。
パッケージでの確認ポイント
- 「医薬部外品」の記載があるかどうかをまず確認する(あれば承認された効能効果の範囲で表示されている)
- 雑品(雑貨)の製品は、洗浄など物理的な作用の範囲を超える効能はうたえない前提で見る
- 「無添加」の対象成分が具体的に書かれているか確認する(対象を書かない無添加表示は、何が無添加なのか分からない)
- 成分の記載があれば、人間用コスメと同じ要領で対象成分の有無を照合する
ペットフードの表示ルールとは別の制度
同じ「ペット用」でも、フードとシャンプー等では根拠になる法律が異なります。フードはペットフード安全法の表示の対象で、シャンプー等は薬機法の枠組みで扱われます(ペットフード安全法で表示が義務になっているのは、名称、賞味期限、原材料名、原産国名、事業者名及び住所の5項目です)。フードのラベルの読み方はドッグフード・キャットフードのラベルの読み方の記事で解説しています。同じ「無添加」でも、根拠の制度がジャンルごとに違う点はペット用品全般に共通します。
よくある質問
「無添加」と書かれたペット用シャンプーなら、皮膚トラブルは起きない?
そうとは限りません。無添加表示は特定の成分が入っていないという事実を示すもので、すべての個体に合うことを保証するものではありません。新しいシャンプーは少量から試して様子を見て、異常が出た場合は使用を中止し、動物病院に相談してください。
「医薬部外品」と書かれたペット用シャンプーは効果が高い?
医薬部外品は、あせも防止や体臭防止など承認を受けた範囲の効能効果を表示できる区分です。雑品(雑貨)より効果が強いという単純な優劣ではなく、承認された効能があるかどうかという目的の違いです。
人間用の無添加シャンプーをペットに使ってもよい?
この記事で参照した公的資料やガイドラインには、人間用の製品をペットに使うことについての定めはありません。人間用の製品はペットへの使用を想定した表示になっていないため、使ってよいかはかかりつけの獣医師に相談してください。
「殺菌」「除菌」と書かれたペット用シャンプーは実在する?
ガイドラインでは、殺菌・消毒は予防を意図する医薬品的な表記にあたるため表記できず、抗菌・除菌も原則として表記できないとされています。「菌を拭き取る」が認められるのは、ウェットティッシュ等で健康な被毛や手足など粘膜以外を単に拭き取り、効能効果を明示も暗示もしない場合です。床やケージなど環境に使う製品は、条件を満たせば除菌・抗菌でも雑品として判断できるとされています。
ペット用シャンプーにも全成分表示の義務はある?
日本ペット用品工業会のガイドラインや農林水産省の資料には、全成分表示についての定めは見当たりません。成分を公開しているかどうかは製品ごとに違うため、パッケージやメーカーの公式サイトで確認してください。
「敏感肌用」と書かれたペット用シャンプーは医薬部外品?
「敏感肌用」「乾燥肌用」は、ガイドラインではただちに医薬品的な表記とは判断されない例に入っています。雑品(雑貨)でも使える表現なので、これだけで医薬部外品とは限りません。一方で「敏感肌専用」「敏感肌に悩む犬に」は医薬品的な表記と判断される例です。
表記が医薬品的かどうか判断がつかないときは?
日本ペット用品工業会は、個別に判断がつかない表記について、事業者の所在地(本社や開発関連事業所の所在地)を所管する都道府県の動物薬事担当の主務課に確認するよう案内しています。主に製品をつくる事業者向けの手続きです。
まとめ
ペット用シャンプー等には人間の化粧品にあたる区分がなく、人用なら化粧品にあたる物は動物用では雑品(雑貨)として扱われます。ほかに医薬部外品と医薬品があり、効能をうたえるのは承認を受けた製品だけです。日本ペット用品工業会のガイドライン(2025年9月5日更新の改訂版)は、洗浄など物理的な作用の範囲にとどめる表記なら医薬品的とは判断されないという線引きを示しています。殺菌・除菌の扱いは、体に使う製品か、拭き取りか、環境用かで条件が変わります。「無添加」はガイドラインの対象外なので、何が配合されていないのかを製品ごとに確かめ、安全の保証として読まないことが基本です。
ペット食材全体をまとめて比較したい方は無添加ペット食材を比較するもあわせてどうぞ。カテゴリ別の「無添加」表示の法的根拠はこちらの早見表で整理しています。
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出典(いずれも2026年10月4日確認)
- 一般社団法人日本ペット用品工業会「ペット用シャンプー等の薬事に関する適切な表記のガイドライン」(平成29年7月作成)https://www.jppma.or.jp/_files/guidelines/Guideline_shanpoo_Med.pdf
- 一般社団法人日本ペット用品工業会「ペット用品の薬事に関する適切な表記のガイドラインについて」https://www.jppma.or.jp/guidelines/5_index_detail.html
- 農林水産省 消費・安全局 畜水産安全管理課 薬事監視指導班「ペットフード・用品等の医薬品医療機器等法上の表示に関する取扱いについて」(令和7年2月17日)https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/yakuzi/y_import/attach/pdf/index-4.pdf
- 農林水産省「ペットフード安全法 表示チェックシート」(令和8年6月、2026年10月5日確認)https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/petfood/attach/pdf/index-91.pdf