この記事は、食品表示のうちアレルギー表示の読み方だけを扱います。診断や食べられるかどうかの判断は、必ずかかりつけの医師の指示に従ってください。除去や解除を自己判断で行わないでください。緊急時の対応や日常の管理については、主治医、お住まいの自治体の保健センター、通っている園や学校の栄養士に相談してください。ここに書いてあるのは、表示のルールがどうなっているかという事実だけです。
子どもに食物アレルギーがあると、買い物のたびにパッケージの裏を確かめることになります。ただ、アレルギー表示には義務のものと推奨のものがあり、表示が免除される場面もあります。どこまでが表示から読み取れて、どこからは読み取れないのかを整理します。
表示が義務づけられている品目

発症数や重篤度から表示が義務づけられている原材料を特定原材料といい、現在は九品目です。えび、かに、くるみ、カシューナッツ、小麦、そば、卵、乳、落花生です。
このうち、くるみは二〇二三年三月に、カシューナッツは二〇二六年四月一日に追加されました。くるみの経過措置は二〇二五年三月末で終わっていますが、カシューナッツは二〇二八年三月三十一日まで経過措置期間です。この間は、カシューナッツを使っていても「含む」と書かれていない商品が店頭に並ぶことがあります。追加されたばかりの品目は、商品によって表示の有無が分かれる時期があるということです。
このほかに、表示が推奨されている「特定原材料に準ずるもの」があります。現在は二十品目で、アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、ピスタチオ、豚肉、マカダミアナッツ、もも、やまいも、りんご、ゼラチンです。
品目は実態調査の結果をもとに見直されています。二〇二四年三月にマカダミアナッツが追加され、まつたけが削除されました。二〇二六年四月にはカシューナッツが推奨から義務へ移り、入れ替わるようにピスタチオが推奨に加わっています。消費者庁の事務連絡では、ピスタチオは症例数が続けて相当数みられること、カシューナッツとの交差反応性も踏まえて、できるだけ早く表示に努めるよう事業者に求めています。
品目の移り変わり
| 時期 | 変更 | 義務の品目数 | 推奨の品目数 |
|---|---|---|---|
| 二〇一九年九月 | アーモンドを推奨に追加 | 七 | 二十一 |
| 二〇二三年三月 | くるみを推奨から義務へ | 八 | 二十 |
| 二〇二四年三月 | マカダミアナッツを推奨に追加、まつたけを推奨から削除 | 八 | 二十 |
| 二〇二六年四月 | カシューナッツを推奨から義務へ、ピスタチオを推奨に追加 | 九 | 二十 |
古いパンフレットや以前の記事で「八品目」「二十一品目」「二十八品目」といった数字を見かけるのは、こうした改正の前の資料だからです。二〇二六年十月時点では、義務と推奨を合わせて二十九品目になります。
義務と推奨の違い
| 特定原材料 | 特定原材料に準ずるもの | |
|---|---|---|
| 位置づけ | 表示の義務 | 表示の推奨 |
| 根拠 | 食品表示基準(内閣府令) | 消費者庁の通知「食品表示基準について」 |
| 品目数(二〇二六年四月以降) | 九 | 二十 |
| 選ばれている理由 | 発症数が多い、または重篤になりやすい | 過去に一定の頻度で健康被害がみられた |
| 表示がないとき | 容器包装された加工食品なら、含んでいれば書かれるのが原則(経過措置中の品目、免除にあたる場合は別) | 使っていないのか、使っているが書いていないのか区別できない |
推奨は義務ではありません。表示がないことは、使われていないことの証明にはなりません。準ずるものにあてはまる食物にアレルギーがある場合は、表示だけで判断せず、製造者に問い合わせるのが確実です。
手がかりになるのが、一括表示の近くに書かれる対象範囲の表示です。消費者庁のハンドブックでは「アレルゲン(29品目対象)」「アレルゲンは義務9品目を対象範囲としています」のような書き方を例に挙げ、どこまでを対象に表示しているかを示すことが望ましいとしています。これも義務ではないので、書かれていない商品もあります。また、改正の前後で「29品目」が指す中身が変わるため、いつの時点の基準に沿った表示かを書き添えることも可能とされています。
なお、義務表示の対象になるのは、原材料に含まれる特定原材料等のたんぱく質が一定量以上(数μg/g以上)ある場合です。消費者庁は、この量を検出する検査方法を通知で定めています。
書き方は二通りある
| 個別表示 | 一括表示 | |
|---|---|---|
| 書き方 | 原材料ごとにかっこ書きで示す | 原材料表示の最後にまとめて示す |
| 例 | マヨネーズ(卵を含む)、しょうゆ(小麦・大豆を含む) | (一部に卵・小麦・大豆を含む) |
| 読むときの注意 | 原材料ごとに確認していく | この一文にすべてが集約されるので見落とさない |
原則は個別表示ですが、表示面積の都合などで一括表示が使われることもあります。消費者庁のハンドブックでは、ひとつの商品で個別表示と一括表示を組み合わせることはできないとされています。一括表示の場合、その一文を見落とすと何も分からないので、原材料表示の末尾を必ず確かめてください。
「代替表記」「拡大表記」を知っておくと読み取れる範囲が広がる
特定原材料と表記の言葉が違っていても、同じものとして扱われる書き方があります。消費者庁の通知(食品表示基準について、別添「アレルゲンを含む食品に関する表示」別表3)には、この2種類の表記が定義されています。
| 意味 | 卵の例 | 乳の例 | |
|---|---|---|---|
| 代替表記 | 表記方法や言葉は違うが、特定原材料と同一だと理解できる表記。この表記があれば「卵を含む」等の表示を省略できる | 玉子、たまご、タマゴ、エッグ、鶏卵、あひる卵、うずら卵 | ミルク、バター、チーズ、アイスクリーム |
| 拡大表記 | 特定原材料名や代替表記を含む語で、その食品であると理解できる表記例 | 厚焼玉子、ハムエッグ | アイスミルク、ガーリックバター、生乳、牛乳、濃縮乳 |
えび・かに・くるみ・小麦・そば・落花生についても同様の代替表記が定められています(えび→海老・エビ、かに→蟹・カニ、くるみ→クルミ、小麦→こむぎ・コムギ、そば→ソバ、落花生→ピーナッツ)。一方で「卵白」「卵黄」は卵という文字を含んでいますが、事故防止の観点から、これをもって「卵を含む」の表示を省略することは認められていません。代替表記・拡大表記のルールにも例外があるということです。
二〇二六年四月版のハンドブックの表では、カシューナッツに代替表記・拡大表記の例は載っていません。推奨品目のピスタチオは「ピスタチオナッツ」が代替表記として挙げられています。また、ミルク、バター、チーズなどは「乳」の字を含まず、ココナッツミルクやカカオバターのように乳を含まない紛らわしい名前もあるため、できるだけ「乳成分を含む」と併記するのが望ましいとされています。
表示が免除されるケースは4種類ある
特定原材料を原材料に含んでいても表示が免除される場合があります。消費者庁の通知が挙げているのは次の4つです。
1 抗原性が認められないもの(精製が完全な乳糖など、アレルギー誘発性がないと確認されているもの)
2 アレルゲン性試験で抗原性が認められないと判断された添加物(食品安全委員会の「添加物に関する食品健康影響評価指針」にもとづく試験による)
3 特定原材料に由来する香料(実際に食物アレルギーを引き起こした知見が乏しいため、現時点では義務付けられていない)
4 特定原材料を原材料とするアルコール類(反応が特定原材料によるものかアルコール自体の作用によるものか判断が難しいため)
もうひとつ知っておきたいのが、同じ特定原材料が食品の中で繰り返し使われる場合の省略ルールです。2種類以上の原材料・添加物に同一の特定原材料が含まれているとき、そのうちのどれか1か所で「含む」旨を表示すれば、残りは省略できます。ただし、これは特定原材料等の話であって、通常の添加物のルールである「加工助剤」「キャリーオーバー」は、特定原材料に関しては表示の免除にならない点は要注意です。添加物の表示ルールでは加工助剤・キャリーオーバーは表示を省略できますが、特定原材料についてはこの省略ルールが適用されず、含まれていれば原則どおり表示が必要です。ごく微量のアレルゲンでも発症するケースがあるため、というのが理由です。
表示が免除される場面
- 外食や、店内で調理して提供されるもの
- その場で包装したり、量り売りしたりするもの
- 容器包装をしていないバラ売りのもの
これらは容器包装された加工食品としての表示義務の対象外になる場合があります。パン屋や総菜店、飲食店では、表示ではなく店に直接確認することになります。任意でアレルギー情報を掲示している店もあります。ただし、ハンドブックによると、飲食店でも容器包装に入れた食品を販売する場合は表示が必要です。
「入っているかもしれない」という表示
「本製品は卵を使用した設備で製造しています」といった注意喚起の表示を見かけます。これは同じ製造ラインや設備を共有していることによる意図しない混入(コンタミネーション)の可能性を知らせるもので、任意の表示です。
重要なのは、「〜が入っているかもしれません」という可能性表示は認められていないという点です。原材料として使っているなら明確に表示する必要があり、あいまいな書き方で逃げることはできません。注意喚起表示は、あくまで製造工程上の可能性を伝えるものです。
消費者庁の通知では、製造者はまず製造ラインの洗浄・専用器具の使用・特定原材料等を含まない食品から順に製造するといったコンタミネーション防止対策を徹底すべきとされており、注意喚起表示はその対策を尽くしてもなお混入の可能性が排除できない場合の最終手段として推奨されているものです。「とりあえず注意喚起を表示しておけばよい」という位置づけではありません。
高価な原材料やまとめ表示にも細かいルールがある
あわびのように単価の高い原材料については、ごく微量しか含まれていないのに多く含まれているかのように誤認させる表示を避けるため、「あわびエキス含有」のように含有量や形態が分かる書き方をすることになっています。また、「小麦、大豆」を単に「穀類」とまとめて表示するような大分類表示は認められていません。例外は魚介類で、網で無選別に捕獲した原材料を使うなど魚種を把握できない製造工程上の事情がある場合に限り、「たんぱく加水分解物(魚介類)」のような表記が認められています。細かい規定ですが、パッケージの一文字一文字に理由があることが分かります。
買い物のときの手順
1 原材料表示の末尾に一括表示のかっこ書きがないかを見る
2 個別表示なら、原材料をひとつずつたどる
3 準ずるもの(義務ではない品目)が関係する場合は、表示だけで判断しない
4 注意喚起表示があるかを確認する
5 同じ商品でもリニューアルで原材料が変わることがあるので、いつも買っているものでも表示を見る
6 判断に迷うものは、パッケージ記載の問い合わせ先に確認する
五番目は見落としやすい点です。パッケージのデザインが同じでも中身が変わっていることがあります。
よくある質問
Q. 特定原材料は八品目ではないのですか。
二〇二六年四月にカシューナッツが加わり九品目になりました。それ以前の資料や記事には八品目と書かれているものがあります。経過措置は二〇二八年三月三十一日までで、その間は表示が切り替わっていない商品も流通します。
Q. ピスタチオは表示されますか。
二〇二六年四月に推奨の品目に加わりました。義務ではないため、表示されていない商品もあります。カシューナッツとの交差反応性が指摘されていることもあり、どちらかにアレルギーがある場合は表示だけで判断せず、主治医に相談したうえで製造者に確認してください。
Q. 「乳成分」と「乳化剤」は関係がありますか。
別のものです。乳化剤は水と油をなじませる添加物の一括名で、乳由来とは限りません。特定原材料等に由来する乳化剤なら、「乳化剤(卵由来)」「乳化剤(大豆由来)」のように由来が書かれるか、一括表示に含まれます。名前が似ているため混同されやすい部分です。心配な場合は問い合わせて確認してください。
Q. 「小麦不使用」と書かれていればグルテンは入っていませんか。
小麦を使っていないという意味であって、大麦やライ麦など他の穀物に由来する成分については別に確認が必要です。表示の対象がどこまでかを見てください。
Q. 外食のときはどうすればよいですか。
表示義務の対象外になる場合が多いので、店に直接確認することになります。あらかじめ問い合わせておく、アレルギー対応の有無を確認しておくといった準備が現実的です。
Q. 表示にない微量の混入が心配です。
注意喚起表示の有無を確認したうえで、それでも不安がある場合は製造者に問い合わせてください。どこまで許容できるかは個人差が大きく、主治医と相談して決める領域です。
Q. 子どもの園や学校に伝えるときはどうすればよいですか。
医師の診断に基づいた書類の提出を求められることが一般的です。園や学校の様式に従い、栄養士や担任と直接すり合わせてください。この記事の内容は、家庭での買い物のときの表示の読み方を補うものです。
Q. 「玉子」と書かれていたら「卵」と同じ意味ですか。
はい。「玉子」「たまご」「エッグ」「鶏卵」などは消費者庁の別表で定められた卵の代替表記で、これらの表示があれば別途「卵を含む」と書かなくても構いません。ただし「卵白」「卵黄」は卵の文字を含んでいても代替表記としては扱われず、含む旨の表示の省略はできません。
Q. 「キャリーオーバー」なら特定原材料でも表示されないのですか。
いいえ。加工助剤やキャリーオーバーに該当する添加物は、通常のルールでは表示を省略できますが、特定原材料等についてはこの省略は適用されません。ごく微量でも症状が出ることがあるため、特定原材料である以上は原則どおり表示が必要とされています。
まとめ
アレルギー表示には、義務の九品目と、推奨の二十品目があります。カシューナッツは二〇二八年三月末まで経過措置中で、ピスタチオは推奨に加わったばかりです。推奨の品目は表示がなくても使われていることがあり、外食やバラ売りでは表示義務の対象外になる場面もあります。代替表記・拡大表記を知っていれば読み取れる範囲は広がりますが、卵白・卵黄のような例外もあり、抗原性が認められないものや香料・アルコール類のように免除されるケースもあります。表示から読み取れるのはここまで、と線を引いたうえで、足りない部分は製造者や店に問い合わせる。そして食べられるかどうかの判断は主治医の指示に従う。表示は判断材料のひとつであって、判断そのものではありません。
外食でのアレルギー表示の扱いは外食・中食で添加物を減らす工夫もあわせてどうぞ。
妊娠中・授乳中の食品表示の読み方は妊娠中・授乳中に気をつけたい食品表示の見方もあわせてどうぞ。
出典(二〇二六年十月一日に確認)
消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/
消費者庁 事務連絡「アレルゲンを含む食品に関する表示について」(令和8年4月1日、カシューナッツの特定原材料追加とピスタチオの準ずるもの追加)
消費者庁「加工食品の食物アレルギー表示ハンドブック」(令和8年4月作成。品目一覧、代替表記・拡大表記、免除、注意喚起表示)
消費者庁 事務連絡「アレルゲンを含む食品に関する表示について」(令和6年3月28日、マカダミアナッツ追加とまつたけ削除)
消費者庁 事務連絡「くるみの特定原材料への追加及びその他の木の実類の取扱いについて」(令和5年3月9日)
消費者庁 次長通知「食品表示基準について」(平成27年3月30日消食表第139号)別添「アレルゲンを含む食品に関する表示」
品目や経過措置は今後も改正されることがあります。最新の内容は消費者庁のページで確認してください。この記事は表示の読み方の解説で、診断や治療、食べてよいかどうかの判断に代わるものではありません。