ハムやソーセージに使われる発色剤の亜硝酸ナトリウムは、食肉製品では亜硝酸根としての最大残存量が1kgあたり0.070gまでと決められています。原料の肉を塩せきしていないソーセージには、食品表示基準で「無塩せきソーセージ」という名称が定められています。無添加を掲げる商品も並んでいますが、何を使っていないのかは商品によって異なります。この記事では公開されている情報をもとに、ハム・ソーセージの表示の読み方と選び方を整理します。
ハム・ソーセージの「無添加」表示とは
ハム・ソーセージも一般の加工食品と同じく、消費者庁が2022年(令和4年)3月30日に策定した「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」の考え方が当てはまります。このガイドラインは不使用表示を一律に禁じるものではありませんが、対象を明示しない単なる「無添加」など、表示を作る際に注意すべき10の類型を示しています。事業者の表示の見直し期間は2024年3月末までとされていました。「無添加」の一言だけでは、発色剤なのか保存料なのかリン酸塩なのかが分からないため、原材料表示で具体的に何を使っていないのかを確かめることが基本になります。
一般的なハム・ソーセージに使われる添加物
日本ハム・ソーセージ工業協同組合は、食肉加工品に添加物が使われる理由を「風味や食感を高め、保存性を向上させるため」と説明しています。あわせて、添加物は国が許可したものを基準値内で使っているとしています。
発色剤(亜硝酸ナトリウム)
同組合によれば、亜硝酸ナトリウムは肉の赤みを引き出し、特有の風味を与え、脂肪の酸化と食中毒菌などの増殖を抑えます。使用基準は食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)で定められています。基準値は使う量ではなく「亜硝酸根としての最大残存量」で、食肉製品と鯨肉ベーコンは1kgあたり0.070g、魚肉ソーセージ・魚肉ハムは0.050g、いくら・すじこ・たらこは0.0050gと、食品ごとに上限が異なります。
なお食品衛生基準行政は、2024年(令和6年)4月1日に厚生労働省から消費者庁へ移管されました。規格基準の告示は現在、消費者庁のページで公開されています。
保存料(ソルビン酸など)
同組合の説明では、保存料のソルビン酸は微生物の増殖を抑え、保存性を高めます。
リン酸塩・調味料(アミノ酸等)
原材料欄にはリン酸塩や調味料(アミノ酸等)が書かれていることもあります。どんな目的で使っているかは、公的資料や業界団体の説明では具体的に示されていません。気になる場合はメーカーの説明を確認してください。
原材料欄での書かれ方

同組合によれば、原材料名には原料肉、調味料、食品添加物などが含有量の高い順に記載され、アレルギー物質も表示されています。発色剤や保存料のように食品表示基準の別表第六に挙げられた用途で使う添加物は、物質名に加えて用途名も書く決まりです。
| 添加物 | 主な役割(業界団体の説明) | 原材料表示での書かれ方 | 使用基準 |
|---|---|---|---|
| 発色剤(亜硝酸ナトリウム) | 肉の赤みを引き出し、特有の風味を与える。脂肪の酸化や食中毒菌などの増殖を抑える | 物質名に用途名「発色剤」を併記 | 亜硝酸根としての最大残存量で、食肉製品・鯨肉ベーコン0.070g/kg、魚肉ソーセージ・魚肉ハム0.050g/kg |
| 保存料(ソルビン酸など) | 微生物の増殖を抑え、保存性を高める | 物質名に用途名「保存料」を併記 | 規格基準で定められている |
| リン酸塩 | 公的資料に具体的な説明なし | 物質名で表示 | メーカーの説明で確認 |
| 調味料(アミノ酸等) | 公的資料に具体的な説明なし | 「調味料(アミノ酸等)」 | メーカーの説明で確認 |
原材料欄の「/」以降を見れば、何をどの目的で使っているかをある程度たどれます。発色剤の略し方など細かな書き方は商品によって異なることがあります。
「無塩せき」とは何を指す言葉か
無添加のハム・ソーセージを探していると「無塩せき」という表示に出会います。食品表示基準では、塩漬(塩せき)は食塩と発色剤に香辛料などを加えて調製したものに食肉を漬け込むことをいいます。発色剤はこの段階で使われます。食品表示基準は、原料の肉を塩漬していないソーセージについて、名称欄に「無塩せきソーセージ」と表示することを定めています。ウインナーソーセージに当たる場合は「無塩せきウインナーソーセージ」と書くこともできます。
注意したいのは、食品表示基準で「無塩せき」の名称が定められているのはソーセージ(とコンビーフの缶詰・瓶詰)だという点です。ハムの名称は骨付きハム・ボンレスハム・ロースハム・ショルダーハム・ベリーハム・ラックスハムなどと定められていて、そこに無塩せきの区分はありません。ハムやベーコンの「無塩せき」は、事業者が任意で付けている表示と考えるのが正確です。
また「無塩せき=すべての添加物が入っていない」という意味でもありません。無塩せきが示すのは発色剤を使った塩漬をしていないことで、調味料や酸化防止剤などが使われていることもあります。無塩せき表示があっても、原材料欄はひととおり確認しておきたいところです。
発色剤を使わない製品の見た目
業界団体が発色剤の役割として挙げているのは、肉の赤みを引き出すことと特有の風味です。そのため発色剤を使わない製品は、一般的な商品と色や風味の印象が違うことがあります。どの程度違うか、賞味期限の設定がどう変わるかは商品ごとに異なるため、パッケージの表示を見て判断してください。
加工肉と健康に関する国際的な評価について
世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)は2015年10月26日、加工肉を「ヒトに対して発がん性がある(Group 1)」に分類したと発表しました。加工肉の摂取が結腸直腸がんを引き起こす十分な証拠がある、という評価です。専門家は、毎日50gの加工肉を食べるごとに結腸直腸がんのリスクが18%上がると結論づけています。同じ発表文は、個人にとってのリスクは小さく、摂取量とともに増えるとも述べています。
Group 1という分類は発がん性の証拠の強さを示すもので、リスクの大きさを示すものではありません。また発表文が対象にしているのは、塩漬・燻製・発酵などで風味や保存性を高めた加工肉全般です。発色剤や亜硝酸塩の有無を比べた結果ではなく、無添加かどうかとは別の話として受け止める必要があります。食べる量や頻度については、公的機関の情報を確認してください。
加熱と保存で気をつけたいこと
日本ハム・ソーセージ工業協同組合によれば、ハム・ソーセージ・ベーコンなどの「食肉製品」は、「加熱して食べてください」などの記載がない限り加熱する必要はありません。ただし「生ソーセージ」は食肉に分類される製品のため、必ず加熱してから食べる必要があります。名称欄と加熱の指示は、無添加かどうかにかかわらず確認したい部分です。
冷凍保存について、同組合は「あまりおススメはできません」と答えています。冷凍すると食感や風味が損なわれるおそれがあるためです。脂肪の多いベーコンや香辛料を練り込んだソーセージは影響を受けにくいとされ、食べきれない場合は1回分ずつ小分けしてから冷凍するよう案内しています。まずは買う量を使い切れる分にしておくと無駄が出にくくなります。
選び方のポイント
- 「無添加」の対象が発色剤・保存料・リン酸塩のうちどれを指しているか、原材料表示で確認する
- ソーセージは名称欄の「無塩せきソーセージ」で発色剤を使った塩漬をしていないかが分かる。ハム・ベーコンの「無塩せき」は任意表示なので原材料欄も見る
- 「生ソーセージ」かどうかと、加熱の指示を確認する
- 子ども向けに使う場合は、原材料表示とあわせてアレルギー表示も確認する
よくある質問
無添加ハムは色が薄いけど傷んでいる?
発色剤には肉の赤みを引き出すはたらきがあるため、使っていない製品は一般的な商品と色の印象が違うことがあります。色だけで傷んでいるとは判断できません。ただし、通常と異なる臭いやぬめりがある場合は、賞味期限や保存状態を確認し、心配な場合は食べるのを控えてください。
発色剤は体に悪い?
発色剤は食品、添加物等の規格基準で使用基準が定められ、その範囲内で使用が認められています。安全性の考え方は公的機関の情報を確認するのが確実です。そのうえで、できるだけ配合物の少ないものを選びたいという考え方から無添加タイプを選ぶ人もいる、という位置づけになります。
無添加ハムは冷凍保存できる?
日本ハム・ソーセージ工業協同組合は、冷凍は「あまりおススメはできません」としています。食感や風味が損なわれるおそれがあるためです。食べきれない場合は1回分ずつ小分けしてから冷凍するよう案内されています。パッケージの保存方法の表示もあわせて確認してください。
子どもに与える際に特に気をつけることは?
添加物の有無だけでなく、アレルギー表示や塩分量も見ておきたいところです。ハム・ソーセージは製造工程で食塩を使うため、小さな子どもには量を控えめにするといった工夫をしている家庭もあるようです。
「無塩せき」と書いてあれば添加物は一切入っていない?
そうとは限りません。無塩せきは原料の肉を塩漬していないことを示す表示で、発色剤を使っていない点は分かりますが、調味料や酸化防止剤が使われていることもあります。原材料欄をひととおり見ておくのが確実です。
発色剤を使わない製品は色が変わるだけ?
業界団体の説明では、亜硝酸ナトリウムは赤みを引き出すだけでなく、特有の風味を与え、脂肪の酸化と食中毒菌などの増殖を抑えるはたらきもあります。どの程度の違いが出るかは商品ごとに異なるので、賞味期限や保存方法の表示を確認してください。
「無塩せきハム」も法律で決まった名称?
食品表示基準で「無塩せき」の名称が定められているのはソーセージ(とコンビーフの缶詰・瓶詰)です。ハムの名称区分に無塩せきはないため、ハムやベーコンの「無塩せき」は事業者の任意の表示です。中身は原材料欄で確認してください。
ハムやソーセージは加熱しないと食べられない?
ハム・ソーセージ・ベーコンなどの食肉製品は、「加熱して食べてください」などの記載がなければ加熱は不要です。「生ソーセージ」は食肉に分類されるため、必ず加熱してから食べてください。
亜硝酸ナトリウムの「0.070g/kg」は入っている量?
使用基準の数値は、製品に残ってよい亜硝酸根の上限(最大残存量)です。使った量や実際に残っている量を示すものではありません。
食品ジャンル別の選び方の記事
ハム・ソーセージでは発色剤やリン酸塩が主な確認点になるように、カテゴリごとに無添加表示が指す範囲も、見るべき添加物も変わります。ほかの食品ジャンルの記事もあわせてどうぞ。
まとめ
ハム・ソーセージの「無添加」表示は、発色剤・保存料・リン酸塩のうちどれを対象にしているかがメーカーによって異なります。亜硝酸ナトリウムの使用基準は最大残存量で決められていて、食肉製品は0.070g/kgです。「無塩せき」が食品表示基準上の名称なのはソーセージで、ハム・ベーコンでは任意の表示です。加工肉とがんに関するIARCの評価は加工肉全般についてのもので、発色剤の有無とは別軸です。原材料表示を確認しながら、家族の好みや使い方に合った商品を選んでみてください。
発色剤や「無塩せき」の表示に限らず、「無添加」表示が何を指すのかは「無添加」の表示ルールの解説で整理しています。
あわせて読みたい
- 保存料・着色料・化学調味料、それぞれ何のために使われているのか ハムに使われる保存料や発色剤など、添加物がそれぞれ何のために使われているかを整理しています。
- 原材料表示、どこから読めばいいのか迷ったときの見方 原材料欄の並び順や書かれ方を読むときの基本を、ハム・ソーセージ以外の食品も含めて確認できます。
- 無添加食品の保存と日持ち 開封後にどれくらいもつか 開封後のハム・ソーセージをどれくらいで食べ切るかの目安を考えるときに、無添加食品全般の保存の考え方を参照できます。
出典(確認日はいずれも2026年10月4日)
- e-Gov法令検索 食品表示基準(平成27年内閣府令第10号) https://laws.e-gov.go.jp/api/1/lawdata/427M60000002010
- 消費者庁 食品添加物の不使用表示に関するガイドライン(令和4年3月30日) https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/assets/food_labeling_cms201_220330_25.pdf
- 消費者庁 食品添加物(規格基準・添加物のリスト等) https://www.caa.go.jp/policies/policy/standards_evaluation/food_additives/
- 厚生労働省 食品添加物 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuten/index.html
- 日本食品化学研究振興財団 各添加物の使用基準及び保存基準(令和8年4月7日改正まで記載) https://www.ffcr.or.jp/webupload/shiyokijyun_R080407.pdf
- 日本ハム・ソーセージ工業協同組合 よくある質問 ハム・ソーセージ・ベーコンには、なぜ「食品添加物」が使われるのですか? https://content.hamukumi.or.jp/faq/%e3%83%8f%e3%83%a0%e3%83%bb%e3%82%bd%e3%83%bc%e3%82%bb%e3%83%bc%e3%82%b8%e3%83%bb%e3%83%99%e3%83%bc%e3%82%b3%e3%83%b3%e3%81%ab%e3%81%af%e3%80%81-%e3%81%aa%e3%81%9c%e3%80%8c%e9%a3%9f%e5%93%81%e6%b7%bb/
- 日本ハム・ソーセージ工業協同組合 よくある質問 ハム・ソーセージ・ベーコンは、加熱しないで食べても良いのでしょうか? https://content.hamukumi.or.jp/faq/faq-1552/
- 日本ハム・ソーセージ工業協同組合 よくある質問 ハム・ソーセージ・ベーコンは、冷凍保存しても大丈夫ですか? https://content.hamukumi.or.jp/faq/faq-1550/
- 日本ハム・ソーセージ工業協同組合 よくある質問 製品にはどんな情報が書かれていますか? https://content.hamukumi.or.jp/faq/faq-1554/
- 日本ハム・ソーセージ工業協同組合 ハムソベの種類(ハムソベ事典) https://content.hamukumi.or.jp/jiten/
- 国際がん研究機関(IARC) Press Release N° 240 IARC Monographs evaluate consumption of red meat and processed meat(2015年10月26日) https://www.iarc.who.int/wp-content/uploads/2018/07/pr240_E.pdf