日焼け止めの化粧品・医薬部外品の区分とSPF・PA表示を示した図

無添加トリビア

日焼け止めは化粧品? 医薬部外品との違いと「無添加」表示

日焼け止めのパッケージにも「無添加」のほかに「SPF」「PA」「ノンケミカル」といった表示が並びます。これらは全て別々の話です。シャンプーや制汗剤と同じように、日焼け止めもまず「化粧品」か「医薬部外品」かという薬機法上の区分があり、そのうえでSPF・PAは業界の測定基準、ノンケミカルは処方の話という、3層構造になっています。この記事では、それぞれを分けて公開情報にもとづき整理します。

この記事は日焼け止めの成分表示・法律上の区分についての解説であり、製品の効能効果を保証するものではありません。肌に合う・合わないには個人差があります。使用中に赤み・かゆみなどの異常を感じた場合は直ちに使用を中止し、皮膚科医に相談してください。

日焼け止めは「化粧品」と「医薬部外品」の2区分

シャンプーや制汗剤と同じく、パッケージに「薬用」と書かれていれば医薬部外品、書かれていなければ化粧品です。日焼け止めの場合、この区分によって広告でうたえる表現の範囲がはっきり分かれます。

区分 うたえる効能効果 成分表示の義務
化粧品(一般的な日焼け止め) 「日焼けを防ぐ」「日焼けによるシミ・ソバカスを防ぐ」の実質2つのみ 全成分表示が薬機法上の義務
医薬部外品(薬用日焼け止め) 承認を受けた薬効成分(美白有効成分等)にもとづく、より広い効能表示が可能 法的義務は有効成分のみ。ただし薬用化粧品として日本化粧品工業会の自主基準で全成分表示が行われている

市販されている日焼け止めの大半は化粧品区分です。医薬部外品の日焼け止めは、美白有効成分など個別に承認された薬効成分を配合しているものに限られます。「無添加」をうたう化粧品の日焼け止めであっても、うたえる効能自体は化粧品の56効能の範囲にとどまり、それ以上の踏み込んだ表現は使えません。

この「2つだけ」という部分は、化粧品の効能の範囲(昭和36年の通知で定められ、平成23年7月21日付け薬食発0721第1号で56項目に整理されたリスト)を実際に見ると確認できます。日やけに関係する項目は「日やけを防ぐ」「日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ」の2つで、これ以上踏み込んだ表現は化粧品では使えません。

薬用日やけ止め剤の有効成分リストに載る前例は3つ

では医薬部外品の日焼け止めは何が違うのか。ここで意外に思われるのが、厚生労働省の「いわゆる薬用化粧品中の有効成分リストについて」(平成20年12月25日付け薬食審査発第1225001号)の内容です。薬用化粧品の種類のひとつ「日やけ止め剤」の項に挙げられている有効成分は、次の3つだけです。なお、この通知のリストは「有効成分の規格及び分量の前例を示すもの」で、リストの範囲内であれば承認申請の際に有効性・安全性の資料提出を原則求めないという位置づけです。リスト外の成分を個別に審査して承認する道がないという意味ではありません。

有効成分 配合量(%)の前例 主な位置づけ
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05 肌荒れ・炎症に関わる成分
グリチルレチン酸ステアリル 0.05〜0.3 同上
トコフェロール酢酸エステル 0.2 ビタミンE誘導体

いずれも紫外線を防ぐための成分ではありません(2026年10月2日に厚生労働省の通知原文で確認)。つまり「薬用」の日やけ止め剤という区分は、紫外線防御力を強くするためのものではなく、肌荒れを防ぐといった別の効能を上乗せするためのものだということになります。美白をうたう日焼け止めは、美白有効成分を配合した別の種類の薬用化粧品として承認を受けているケースが多く、いずれにしても「医薬部外品だから紫外線を強く防ぐ」という関係ではありません。

SPF・PAは法律の表示義務ではなく、業界の測定基準にもとづく表示

SPFは紫外線B波(UVB)に対する防御効果を、PAは紫外線A波(UVA)に対する防御効果を数値・記号で示したものです。これらは薬機法が定めた表示義務ではなく、日本化粧品工業会が定めた測定基準にもとづいて各メーカーが自主的に表示しています。国際的にはISOの測定規格もあり、国内メーカーもこれに準拠した測定を行っている場合があります。

SPF・PAの数値が高いことと、「無添加」であることは別の話です。SPF50+の商品でも紫外線吸収剤や香料を配合していることがあり、逆にSPFが低めの商品でも紫外線吸収剤フリーとは限りません。両方を確認したい場合は、区分の表示とは別に成分表示を見る必要があります。

紫外線吸収剤と紫外線散乱剤、「ノンケミカル」の意味

日焼け止めの「無添加」訴求でよく使われる「ノンケミカル」は、薬機法上の区分でも法令用語でもなく、紫外線を防ぐ仕組みの違いを指す言葉です。

種類 防御の仕組み 主な成分・特徴
紫外線吸収剤 紫外線を化学的に吸収し、熱エネルギー等に変換する 防御力が高く伸びが良い一方、肌への刺激を感じる人がいる
紫外線散乱剤(ノンケミカル) 紫外線を物理的に反射・散乱させる 酸化亜鉛・酸化チタンが主成分。肌への負担が比較的軽いとされる一方、白浮きしやすい

紫外線散乱剤だけで作られた日焼け止めが「ノンケミカル」と呼ばれます。「紫外線吸収剤フリー」を「無添加」と同じ意味で使っているメーカーもありますが、これは特定の成分を使っていないという意味であり、香料・防腐剤など他の成分まで無添加とは限りません。何が入っていないと言っているのか、成分表示を個別に確認する必要があります。

紫外線吸収剤は「使ってよい成分」が法令で限定されている

吸収剤と散乱剤の違いは、成分の規制のされ方にも表れています。化粧品に配合してよい成分を定めた化粧品基準(平成12年9月29日厚生省告示第331号)は、化粧品の成分について原則として企業の責任で配合できる仕組みをとりながら、防腐剤・紫外線吸収剤・タール色素の3種類だけは「掲げられた物でなければならない」というリスト方式をとっています。紫外線吸収剤は別表第4に列挙されたものしか使えず、しかも成分ごとに100g中の最大配合量が決まっています。

紫外線吸収剤の例 100g中の最大配合量
サリチル酸ホモメンチル 10g
オクトクリレン 10g
4-tert-ブチル-4′-メトキシジベンゾイルメタン 10g
トリスビフェニルトリアジン 10.0g
パラアミノ安息香酸及びそのエステル 合計量として4.0g
サリチル酸オクチル 10g(粘膜に使用されることがある化粧品は5.0g)

別表第4は「すべての化粧品に配合の制限がある成分」と「化粧品の種類により配合の制限がある成分」に分かれており、後者では、洗い流すもの・洗い流さないもの・粘膜に使用されることがあるもので上限が変わります。唇に使う日焼け止めが顔用と同じ処方とは限らないのは、こうした区分があるためです。

一方、紫外線散乱剤として使われる酸化チタン・酸化亜鉛は、この紫外線吸収剤のリストには含まれていません。「ノンケミカル」の製品は、紫外線吸収剤のリストと上限の話がそもそも適用されない処方ということになります。ただしこれは規制が緩いという意味ではなく、化粧品全体に適用される配合禁止成分(別表第1)や配合制限(別表第2)、そして製品としての安全性確保の責任は変わりません。

「無添加」の日焼け止めを見るときに確認したい3つの視点

  • 化粧品か医薬部外品か(パッケージの「医薬部外品」表示の有無)
  • SPF・PAの数値(業界の測定基準にもとづく、UVB・UVAそれぞれの防御力の目安)
  • 紫外線吸収剤を使っているか、紫外線散乱剤(ノンケミカル)のみか、成分表示欄の記載
  • 「薬用」表示がある場合、その有効成分が何で、何の効能のために入っているのか(紫外線防御とは別の話であることが多い)

この3つは互いに独立した情報です。区分・SPF/PA・処方のどれか1つだけを見て「この日焼け止めは無添加だから安心」と判断せず、気になる成分がある場合は成分表示欄を直接確認することが確実です。

よくある質問

日焼け止めは医薬部外品のほうが効果が高い?

紫外線を防ぐ効果(SPF・PA)自体は化粧品でも医薬部外品でも表示できます。医薬部外品は美白等の別の薬効成分を含むことで、化粧品にはない効能表示ができる、という違いです。紫外線防御力の高さそのものを区分だけで比較することはできません。

「ノンケミカル」と書いてあれば無添加と考えていい?

ノンケミカルは紫外線吸収剤を使っていないという意味にとどまり、香料・防腐剤等の他の成分については何も示していません。「無添加」の中身を確認したい場合は、成分表示欄を見て何が入っていないかを個別に確認する必要があります。

SPF・PAの数値はどこが決めている?

薬機法が定めた表示義務ではなく、日本化粧品工業会が定めた測定基準にもとづき、各メーカーが自主的に測定・表示しています。国際的なISOの測定規格に準拠して測定している場合もあります。

紫外線吸収剤は肌に良くないもの?

紫外線吸収剤は防御力が高く伸びが良い一方、人によっては刺激を感じることがあるとされています。肌への影響の感じ方には個人差があるため、気になる場合は少量から試す、または皮膚科等に相談することが案内されています。

化粧品の日焼け止めは全成分を確認できる?

化粧品は薬機法第61条により全成分表示が法的義務です。医薬部外品は法律上の義務は有効成分のみですが、薬用日焼け止めは薬用化粧品にあたるため、日本化粧品工業会の自主基準で全成分表示が行われているのが実態です。どちらもパッケージまたは公式サイトの成分表示欄で確認できます。

SPF50+とSPF30では、どちらを選べばいい?

数値が高いほど紫外線防御力の目安は上がりますが、同時に紫外線吸収剤・散乱剤の配合量が増える傾向もあります。日常生活か屋外での長時間活動かなど、使うシーンに応じて選ぶという考え方が案内されています。

「薬用日焼け止め」は紫外線を強く防ぐという意味?

違います。厚生労働省の薬用化粧品の有効成分リスト(前例を示すもの)で「日やけ止め剤」の有効成分として挙げられているのは、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルレチン酸ステアリル、トコフェロール酢酸エステルの3つで、いずれも紫外線を防ぐ成分ではありません。肌荒れを防ぐといった別の効能を上乗せするための区分と考えるのが正確です。

日本で使える紫外線吸収剤は決まっている?

決まっています。化粧品基準(平成12年9月29日厚生省告示第331号)は、化粧品に配合される紫外線吸収剤を別表第4に掲げる物に限り、成分ごとに最大配合量を定めています。防腐剤とタール色素も同じくリスト方式です。海外製品を個人輸入する場合、日本では認められていない吸収剤が使われていることがあるのはこのためです。個人輸入の関税や1回の注文上限の考え方は、iHerbを例にしたiHerb(アイハーブ)で無添加・オーガニック食品やサプリを買うときに知っておきたいことで整理しています。

唇用の日焼け止めは顔用と成分が違う?

違う場合があります。紫外線吸収剤の一部は、粘膜に使用されることがある化粧品では上限が低く設定されています(例 サリチル酸オクチルは通常10gのところ5.0g)。リップ用の製品が顔用と同じ処方とは限らないのは、こうした区分があるためです。

まとめ

日焼け止めは、シャンプーや制汗剤と同じく「化粧品」か「医薬部外品」かという薬機法上の区分がまずあり、そのうえでSPF・PAという業界の測定基準、紫外線吸収剤・紫外線散乱剤(ノンケミカル)という処方の違いが別の階層として存在します。「無添加」の中身を確認したいときは、この3つを分けて見ることで、何が入っていて何が入っていないのかがはっきりします。

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出典 医薬品医療機器等法(薬機法)/厚生労働省「化粧品基準」(平成12年9月29日厚生省告示第331号)別表第1・別表第4/厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年7月21日付け薬食発0721第1号)/厚生労働省「いわゆる薬用化粧品中の有効成分リストについて」(平成20年12月25日付け薬食審査発第1225001号)/日本化粧品工業会のSPF・PA測定基準および医薬部外品成分表示に関する自主基準の公開情報

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