化粧品の全成分表示が義務になったのは平成13年(2001年)4月です。日本化粧品工業連合会の自主基準(2018年7月31日)では、成分を配合量の多い順に書き、1%以下の成分は順不同でよいと決められています。つまり裏面の成分名の並びには、読み解くための決まりがあります。
この記事では、全成分表示のルールと「無添加」表示を確かめるときの見どころを、日本化粧品工業会や消費者庁、e-Gov法令検索などの公開情報にもとづいて整理します。
この記事は全成分表示と「無添加」表示の法律上の扱いについての解説であり、化粧品の効能効果を保証するものではありません。肌に合う・合わないには個人差があります。使用中に赤み・かゆみなどの異常を感じた場合は直ちに使用を中止し、皮膚科医に相談してください。
全成分表示とは何か
日本では薬機法(医薬品医療機器等法)にもとづき、化粧品に配合したすべての成分を容器や外箱に表示することが義務付けられています。これを「全成分表示」と呼びます。薬機法第61条は化粧品の直接の容器や被包に書く事項を定めており、製造販売業者の氏名と住所、名称、製造番号に並んで、4号で「厚生労働大臣の指定する成分」の名称を挙げています。平成12年に公布された厚生省の告示によって全成分を表示する方針が具体化され、現在はメーカーを問わず配合成分を確認できるようになりました。
表示に使う成分名は各社が自由につけるものではありません。日本化粧品工業会(旧・日本化粧品工業連合会)が作成する「化粧品の成分表示名称リスト」の表示名称を用いて書く運用です。化粧品の表示名称は届出制で、承認を受ける必要はありません。
全成分表示にたどりつくまでの経緯
日本化粧品工業会がまとめた規制の変遷によると、昭和55年(1980年)に使用期限と「指定成分」の表示規定が導入されました。当時は国が指定した成分(いわゆる旧表示指定成分)だけを書けばよい仕組みでした。
その後、厚生省(現在の厚生労働省)は平成10年の「今後の化粧品規制の在り方について」を受けて全成分を表示する方針を定め、平成12年(2000年)9月29日に告示を公布しました。平成13年(2001年)には化粧品の承認制が原則廃止され、同時に全成分表示が導入されています。「旧表示指定成分は入っていません」という書き方は、指定成分だけを表示していた時代の枠組みにもとづくものです。いまはすべての成分が表示されているので、全成分表示そのものを見るほうが確実です。
化粧品と医薬部外品では表示のルールが違う
売り場には「化粧品」と書かれた商品と、「医薬部外品」や「薬用」と書かれた商品が並んでいます。薬用化粧品の容器や外箱には「医薬部外品」と表示されます。二つは薬機法上の区分が別で、成分表示の決まりも同じではありません。
| 項目 | 化粧品 | 医薬部外品(薬用化粧品) |
|---|---|---|
| 全成分の表示 | 薬機法にもとづく表示義務がある | 法律上の全成分表示義務はなく、業界団体の自主基準として実施 |
| 根拠となる条文 | 薬機法第61条 | 薬機法第59条(指定成分の名称、指定品目では有効成分の名称と分量) |
| 有効成分の表示 | 「有効成分」という区分はない | 指定品目では有効成分の名称と分量の記載が法律で求められる |
| 表示の順番 | 自主基準で配合量の多い順。1%以下は順不同。着色剤は最後にまとめる方式も選べる | 化粧品とは別の自主基準による。有効成分は承認書の記載順、その他の成分は企業の判断 |
| 成分名の根拠 | 「化粧品の成分表示名称リスト」の表示名称(届出制) | 承認書に記載された成分名が原則。名称リストは化粧品とは別 |
| 販売までの手続き | 2001年に承認制が原則廃止され、届出が中心 | 品目ごとに承認が必要 |
| 成分表示の開始 | 平成13年(2001年)に全成分表示を導入 | 平成18年(2006年)4月1日から実施(猶予期間2年間)。基本方針は2006年3月10日付 |
医薬部外品の成分表示は、日本化粧品工業会が自主基準として決めたもので、平成18年(2006年)4月1日から実施されました。猶予期間が2年間設けられたため、すべての製品に行き渡ったのはその2年後です。薬用化粧品の裏面に成分が並んでいても、法律で強制された全成分表示ではありません。
成分の並び順にはルールがある
並び順を決めているのは法律の条文ではなく、日本化粧品工業連合会の「化粧品の全成分表示の記載方法に関する自主基準」(2018年7月31日)です。成分は仕込み時の分量にしたがって書きます。透明石けんのように製造中に分量が変わるものは、最終製品の分量で書いてもかまいません。
着色剤の扱いは次の2方式から選べます。
- 方式1 着色剤も含めたすべての成分を配合量の多い順に書く(1%以下は順不同)
- 方式2 着色剤以外の成分を配合量の多い順に書き、そのあとに着色剤をまとめて順不同で書く
末尾に着色剤がまとまっているのは、方式2を選んだ製品です。ここでいう着色剤にはタール色素(有機合成色素)、酸化チタンや酸化鉄などの無機顔料、天然色素が含まれます。香料は構成成分に分けず「香料」と一つで書くことができるため、香りの中身までは表示からわかりません。
表示順から読み取れるのは「おおよその多い少ない」までです。どこからが1%以下なのかは表示に書かれていないため、境目を見分けることはできません。前半の成分ほど配合量が多い目安にはなりますが、後ろにあるから影響がないとも言い切れません。
表示しなくてよい成分もある
同じ自主基準は、次の成分を容器等に書かなくてよいとしています。「無添加」と書かれた商品の全成分を読むときに知っておきたい点です。
- キャリーオーバー成分 原料に含まれていた防腐剤や酸化防止剤などで、化粧品の中では効果が出る量より少ない微量しか残らないもの
- 製造補助剤 製造工程で意図的に加えても、最終製品には存在しないもの
全成分表示に名前がないことは、その成分が製品として効果を持つ量では入っていないことを示します。原料の段階までさかのぼって一切使っていないかどうかは、表示だけでは判断できません。
「無添加」化粧品の表示は対象成分を確かめる
化粧品の「無添加」は、何を入れていないのかが商品によって異なります。かつては旧表示指定成分を含まないことを「無添加」と呼ぶ慣習がありましたが、指定成分を表示する枠組みは2001年の全成分表示の導入で役目を終えました。現在の「無添加」は、各メーカーが対象に選んだ成分を指していることが多いようです。日本化粧品工業会の「化粧品等の適正広告ガイドライン2020年版」は、単に「無添加」とだけ書くのは何を添加していないのか不明で不正確な表現だとし、添加していない成分を明示すれば表現してよいとしています。
「無添加」の一言で判断せず、「〇〇無添加」と具体的に書かれた成分名を確かめると、何が入っていないのかがわかります。食品の分野では、消費者庁が2022年3月30日に「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」を策定し、対象を書かない単なる「無添加」表示(類型1)をはじめ10の類型を示しました。これは食品表示基準第9条の禁止事項に照らして食品の任意表示を整理したもので、化粧品は対象外です。それでも対象を明示しない無添加表示は誤解を招きやすいという考え方は参考になります。
また化粧品は薬機法の枠内で、医薬品のような効果表現や「比類なき安全性」のような最大級の表現ができません。「無添加だから安全」といった言い回しを見かけたら、表示の根拠を確かめるきっかけにしてください。
よく見かける「無添加」対象成分の例
- パラベン(防腐剤の一種)
- 香料
- 着色剤
- 鉱物油
- 紫外線吸収剤
- エタノール(アルコール)
- シリコン
これらは防腐や使用感、香りづけなど、化粧品として必要な機能を持たせるために配合されることが多い成分です。防腐剤を減らした処方では、開封後の管理に気をつける必要が出る場合もあります。「無添加=良いもの」と一律に考えず、なぜその成分が使われているのかを知ったうえで、肌質や好みに合わせて選ぶのが現実的です。
敏感肌向け表示との違い
「低刺激」「敏感肌向け」といった表示も、メーカーが独自の基準で試験を行い、その結果をもとに書いていることが一般的です。同じガイドラインは、低刺激性が客観的に立証されていない場合は「低刺激」等の表現をしないよう定めています。どのような試験をしたのかを公式サイトで確かめると実態がつかみやすくなります。
パッチテストについて
「無添加」や「低刺激」とうたう化粧品でも、すべての人に合うとは限りません。新しい化粧品を使い始めるときは、目立たない部分に少量をつけてしばらく様子を見る方法が一般に知られています。具体的なやり方は各商品の説明書きにしたがってください。パッチテストは肌に合うことを保証するものではありません。赤みやかゆみなどが出たら使用をやめ、症状が続く場合は皮膚科を受診してください。
よくある質問
成分表示の順番を見れば配合量が正確にわかる?
配合量の多い順に書く決まりはありますが、1%以下の成分は順不同でよいため、後半の成分は表示順だけで配合量を判断できません。着色剤は、配合量順に混ぜて書く方式と、最後にまとめて順不同で書く方式のどちらかを選べます。末尾に着色剤が並んでいる製品は後者です。
「オーガニックコスメ」と「無添加コスメ」は同じ?
全成分表示はどこに書かれている?
薬機法第61条は直接の容器または直接の被包への記載を求めています。ボトルや外箱、同梱の説明書などで確認できます。文字が小さく読みにくい場合は、公式サイトの商品ページに全成分が載っていることも多いため、購入前にオンラインで確かめる方法もあります。
薬用化粧品(医薬部外品)の成分表示も化粧品と同じルール?
同じではありません。医薬部外品には化粧品のような全成分表示の法的義務はなく、業界団体の自主基準として平成18年(2006年)4月1日から成分表示が行われています(猶予期間2年間)。成分名も承認書に記載された名称が原則で、化粧品の表示名称とは異なります。
全成分表示に載っていない成分は一切入っていない?
そうとは限りません。自主基準では、原料由来で効果が出る量より少ないキャリーオーバー成分や、最終製品に残らない製造補助剤は記載しなくてよいとされています。表示は最終製品に配合された成分を示すものと考えてください。
「香料」と一語だけ書いてあるのはなぜ?
自主基準で、香料は構成成分に分けず一つの成分として「香料」と書けることになっているためです。香りを作っている個々の成分までは表示からわかりません。
「無添加」と書いてあれば肌トラブルは起きない?
そうとは限りません。無添加の対象になっていない成分でも、体質によって合わないことはあります。無添加表示は「その成分が入っていない」という事実を示すもので、すべての人に合うことを保証する表示ではありません。気になる症状が出た場合は使用を中止し、皮膚科などの専門家に相談してください。
まとめ
化粧品の全成分表示は配合量順が基本で、1%以下の成分は順不同、着色剤は最後にまとめる方式も選べます。キャリーオーバー成分のように書かなくてよい成分もあります。医薬部外品は法的な全成分表示義務がなく、2006年4月1日からの自主基準による表示なので、同じ売り場に並んでいても読み方の前提が違います。「無添加」はメーカーごとに対象が異なるため、どの成分を指しているかを確かめてから選んでください。初めて使う化粧品は少量から試すと安心です。
成分表示の読み方を踏まえて、ブランドごとの違いを見比べたい場合は無添加コスメの比較ガイドを参照してください。全成分表示のルールは浴用化粧品(入浴剤)にも共通します。医薬部外品・雑貨との違いは入浴剤の法律上の分類の記事で解説しています。
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出典(いずれも2026年10月4日確認)
- 日本化粧品工業会 成分表示(自主基準・ガイドライン) https://www.jcia.org/user/business/guideline/ingredientlabelling
- 日本化粧品工業連合会 化粧品の全成分表示の記載方法に関する自主基準について(2018年7月31日) https://www.jcia.org/user/common/download/business/guideline/ingredientlabelling/20180731_IngredientLabelling_Standard-3.pdf
- 日本化粧品工業会 化粧品の成分表示の趣旨説明 https://www.jcia.org/user/business/ingredients/cmtexplain
- 日本化粧品工業会 化粧品と医薬品医療機器等法 https://www.jcia.org/user/public/knowledge/glossary/law
- 日本化粧品工業会 化粧品関連法規について(規制の変遷) https://www.jcia.org/user/public/law
- 日本化粧品工業会 医薬部外品の成分表示の趣旨説明 https://www.jcia.org/user/business/ingredients/drugexplain
- 日本化粧品工業会 化粧品と薬用化粧品 https://www.jcia.org/user/public/knowledge/glossary/cosmeceuticals
- 日本化粧品工業会 全成分表示名称作成業務 よくある質問 https://www.jcia.org/user/business/ingredients/qa
- 日本化粧品工業連合会 医薬部外品の成分表示に係る日本化粧品工業連合会の基本方針(2006年3月10日) https://www.jcia.org/user/common/download/business/guideline/ingredientlabelling/20060310_IngredientLabelling_Standard-2.pdf (2026年10月5日確認)
- 日本化粧品工業会 化粧品等の適正広告ガイドライン2020年版 https://www.jcia.org/user/common/download/business/advertising/JCIA20200615_ADguide.pdf (2026年10月5日確認)
- e-Gov法令検索 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 https://laws.e-gov.go.jp/api/1/lawdata/335AC0000000145
- 消費者庁 食品添加物の不使用表示に関するガイドライン(令和4年3月30日) https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/assets/food_labeling_cms201_220330_25.pdf