制汗剤・デオドラントは化粧品? 医薬部外品との違いと「無添加」表示

無添加トリビア

制汗剤・デオドラントは化粧品? 医薬部外品との違いと「無添加」表示

制汗剤・デオドラントも、シャンプーや入浴剤と同じように薬機法上の区分によって、うたえる効果の範囲が変わります。「汗のニオイを抑える」と書けるかどうかは、実は区分によって決まっているという話を、厚生労働省の通知など公開情報をもとに整理します。汗の悩みに関しては、化粧品・医薬部外品の上に医薬品という区分もあるため、その線引きもあわせて見ていきます。

制汗剤・デオドラントは医薬部外品と化粧品に分かれる

シャンプーと同様、「薬用」と表示されていれば医薬部外品、そうでなければ化粧品にあたります。ただし制汗剤・デオドラントの場合、この区分によって「そもそも汗やニオイへの効果をうたえるかどうか」自体が変わってくる点が、シャンプー以上にはっきりした違いになります。店頭で迷ったら、私は商品名や香りの説明より先に、「薬用」の二文字とその近くにある効能の書き方を見ます。デザインの好みで比べるのは、区分を確かめてからでも遅くありません。同じ棚に並んでいても中身の位置づけが違うことがあるので、最初のひと手間で選び直しが減るはずです。

区分 うたえる効果 主な有効成分の例
医薬部外品(腋臭防止剤) わきが(腋臭)、皮膚汗臭、制汗 殺菌成分(ベンザルコニウム塩化物等)、制汗成分(クロルヒドロキシアルミニウム、焼ミョウバン等)。全成分表示は法的義務ではないが業界の自主基準で行われている
化粧品(デオドラント化粧品) 香りづけによるマスキングのみ。ニオイを抑える・汗を抑えるという効能は表示不可 香料が中心

「腋臭防止剤」は薬用化粧品とは別枠の医薬部外品

医薬部外品というと「薬用化粧品」をまとめて指すイメージがありますが、制度上はもう少し細かく分かれています。厚生労働省の「いわゆる薬用化粧品中の有効成分リストについて」(平成20年12月25日付け薬食審査発第1225001号)は、当初、薬用化粧品としてシャンプー、リンス、化粧水、クリーム・乳液・ハンドクリーム等、ひげそり用剤、日やけ止め剤、パック、薬用石けん(洗顔料を含む)の8種類を挙げていました。その後、薬用シャンプーと薬用リンスは平成26年5月2日付け(薬食審査発0502第1号)、薬用石けんは平成30年3月29日付け(薬生薬審発0329第13号)の別の留意事項に移され、このリストの該当項は削除されています。当初の8種類にも、その後の見直しにも、制汗剤・デオドラントは入っていません。なおこのリストは、薬用化粧品の種類ごとに有効成分の規格や分量の「前例を示すもの」とされています。

制汗剤・デオドラントは、薬用化粧品とは別に「腋臭防止剤」という独立した品目として医薬部外品に位置づけられています。薬事法の施行通知(昭和36年2月8日付け薬発第44号)では、腋臭防止剤について、体臭の防止を目的とする外用剤で、液剤・軟膏剤・エアゾール剤・散剤・チック様のものを主な剤型とし、効能または効果の範囲を「わきが(腋臭)、皮膚汗臭、制汗」としています。同じ通知には、成分としてタンニン酸、塩化アルミニウム、酢酸アルミニウム、焼ミョウバン、硫酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ホウ酸、安息香チンキ、クロロフィリンといった名称が挙げられています。ミョウバンやアルミニウム塩が制汗の文脈でよく出てくるのは、こうした古くからの整理が背景にあります。現在も、医薬品等適正広告基準の解説通知(平成29年9月29日付け薬生監麻発0929第5号)の別紙で、腋臭防止剤の効能または効果の範囲は「わきが(腋臭)、皮膚汗臭、制汗」と示されており、昭和36年の整理から変わっていません。

パッケージの効能表示が「わきが(腋臭)・皮膚汗臭・制汗」の範囲に収まっていれば、それは腋臭防止剤として承認を受けた医薬部外品の表示です。この3つを超える表現(多汗症を治す、といった言い方)は、医薬部外品では使えません。

化粧品の効能56項目には「汗」も「体臭」もない

では、「薬用」と書かれていないデオドラント製品は何を根拠に売られているのでしょうか。化粧品がうたえる効能は、昭和36年の通知で定められ、平成23年7月21日付け薬食発0721第1号「化粧品の効能の範囲の改正について」で56項目に整理されたリストの範囲内に限られます。この56項目を通して見ると、頭皮・毛髪、皮膚、爪・口唇、歯・口腔に関する効能が並びますが、汗を抑える、体臭を防ぐという項目はありません。においに関係するのは「香りにより毛髪、頭皮の不快臭を抑える」と「芳香を与える」の2項目だけで、どちらも香りによるものです。

つまり化粧品区分のデオドラント製品は、香料でにおいを感じにくくする範囲の製品ということになります。効果がないという意味ではなく、制度上そこまでしか表示できないという話です。外出前に香りを足したい程度なら化粧品区分でも目的に合いますが、ニオイそのものを抑えたい人が香りで覆い続けているなら、区分から見直してみる価値はあると思います。どちらが上という話ではなく、自分が何を減らしたいのかで向き不向きが分かれます。

医薬部外品は殺菌成分・制汗成分で効能をうたえる

医薬部外品の制汗デオドラントは、殺菌成分(皮膚の常在菌の増殖を抑えることでニオイの発生を抑える)と制汗成分(汗そのものの分泌を一時的に抑える)を組み合わせているものが多く、承認された範囲内で「汗のニオイを抑える」といった表示ができます。承認は品目ごとに必要で、配合できる有効成分とその分量は前例にもとづいて審査されます。

ただし、わきが自体を根本的に治すものではなく、あくまで日常的なケアとしての位置づけです。「薬用」と書いてあると強い効き目を期待しがちですが、個人的には「表示できる効能の範囲が決まっている製品」という目印くらいに受け止めるのがちょうどよいと考えます。期待を上げすぎないほうが、合う合わないも冷静に見られます。気になる症状が強い場合は、皮膚科等の医療機関に相談することが案内されています。

成分表示は「業界の自主基準」で全成分が出ている

成分表示について、法律上の義務は有効成分の名称と分量だけです。ただし日本化粧品工業会は2006年4月から、医薬部外品のうち薬用化粧品(薬用石鹸を除く)・育毛剤・腋臭防止剤・除毛剤・てんか粉類・忌避剤の6種類について、業界の自主基準として全成分表示を行っています。制汗剤・デオドラントはこの対象に含まれるため、パッケージや公式サイトで全成分を確認できるのが実態です。

同じ医薬部外品でも、薬用石鹸はこの自主基準の対象に含まれず、日本石鹸洗剤工業会が別の自主基準(平成18年4月1日から実施)で全成分表示を行っています。いずれも法律上の義務ではなく、自主基準の担い手が団体ごとに異なる点は、制汗剤・デオドラントを見るうえで押さえておきたいところです。とはいえ買う側としては、裏付けが法律か自主基準かを細かく覚えるより、成分一覧をパッケージや公式サイトで実際に開いて読むほうが役に立ちそうです。制度の違いは、表示を疑問に感じたときに思い出せれば十分です。

製品 法律上の成分表示義務 業界の自主基準による全成分表示
医薬部外品の制汗剤・デオドラント(腋臭防止剤) 有効成分の名称・分量 対象(表示されているのが実態)
医薬部外品の薬用石鹸 有効成分の名称・分量 日本化粧品工業会の対象外(日本石鹸洗剤工業会の別の自主基準がある)
化粧品のデオドラント製品 全成分表示が義務 (法的義務があるため対象外)

「無添加」表示の考え方

制汗剤・デオドラントの「無添加」表示は、化粧品(全成分表示が法的義務)・医薬部外品(法的義務ではないが業界の自主基準で全成分表示)のどちらでも、実際には成分一覧を確認できるのが一般的です。違いは表示の裏付けが「法律」か「業界の自主基準」かという点にあります。この構造はシャンプーの法的分類の記事で解説した内容と共通しています。

また、「無添加」が何を指しているかは製品ごとに違います。アルコール(エタノール)なのか、パラベン等の防腐剤なのか、合成香料なのか、あるいはアルミニウム塩なのか。制汗剤の場合、制汗成分であるアルミニウム塩を使っていないことを訴求する製品もありますが、その場合はかわりに何で汗やにおいに対応しているのか(殺菌成分なのか、吸着成分なのか、香りなのか)まで見ると、区分と効能表示の理解がつながります。迷いやすいのは、「無添加」の文字が大きいほど中身まで良さそうに見えてしまうところです。私なら表の大きな文字より裏の成分一覧と効能表示を先に読み、自分が避けたい成分が入っていないかで判断します。避けたい成分が特にない人にとっては、無添加かどうかより区分と目的が合っているかのほうが大事な比較の軸になると考えます。

汗の悩みが強い場合は「医薬品」という区分もある

制汗・におい製品の医薬品・医薬部外品・化粧品の区分の図

制汗剤の話は化粧品と医薬部外品の2区分で語られがちですが、汗そのものについては、その上に医薬品という区分があります。日本皮膚科学会の「原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版」によれば、国内では2020年9月25日にソフピロニウム臭化物を含有するゲル剤(エクロックゲル5%)が原発性腋窩多汗症の治療薬として初めて承認され、2022年1月20日にはグリコピロニウムトシル酸塩水和物を含有するワイプ剤(ラピフォートワイプ2.5%)が承認されています。いずれも外用の抗コリン薬で、医師の診断と処方が必要な医療用医薬品です。

区分 位置づけ 入手方法
医薬品(医療用) 原発性腋窩多汗症などの治療を目的とする 医師の診断・処方
医薬部外品(腋臭防止剤) わきが(腋臭)、皮膚汗臭、制汗の範囲での予防・防止 ドラッグストア等で購入
化粧品(デオドラント化粧品) 香りによるマスキング ドラッグストア等で購入

市販の制汗剤で対応しきれないほど汗の量が多い、日常生活に支障が出ているという場合は、製品を買い替え続けるより医療機関に相談したほうが選択肢が広がります。無添加かどうか、成分が何かという話は、この線引きとは別の軸の問題です。

選ぶときに確認したいポイント

  • 「薬用」の表示があるかどうかで、医薬部外品(腋臭防止剤)か化粧品かを判別する
  • 効能表示が「わきが(腋臭)・皮膚汗臭・制汗」の範囲に収まっているかを見る。それを超える表現があれば区分に照らして確認する
  • ニオイそのものを抑えたい場合は医薬部外品、香りづけで十分な場合は化粧品、と目的で選び分ける
  • 制汗剤・デオドラントは業界の自主基準で全成分が表示されているので、「無添加」の対象成分を成分表で具体的に確認する
  • アルミニウム塩不使用をうたう製品は、かわりに何でにおいに対応しているのかを見る
  • 肌に合わないと感じたら使用を中止し、症状が続く場合は皮膚科に相談する
  • 汗の量そのものが悩みの中心なら、日常ケアと並行して医療機関への相談も検討する

よくある質問

「制汗剤」と「デオドラント」は同じもの?

厳密には目的が異なります。制汗は汗そのものの分泌を抑えること、デオドラントはニオイを抑えることを指しますが、医薬部外品の腋臭防止剤は「わきが(腋臭)、皮膚汗臭、制汗」がまとめて効能の範囲とされており、両方の機能を持つ製品も多いため、市場では区別なく使われることもあります。

化粧品のデオドラント製品は効果がない?

効果がないわけではありませんが、法律上「ニオイを抑える」効能をうたえないという違いです。化粧品の効能56項目には汗や体臭に関する項目がなく、においに関係するのは「香りにより毛髪、頭皮の不快臭を抑える」「芳香を与える」の2つだけです。香りによって気になりにくくする、という範囲の製品になります。

「無添加」の制汗剤は効き目が弱い?

無添加であることと効き目の強さは別の話です。無添加は特定成分を配合していないことを示す表示であり、有効成分の効き目自体は医薬部外品としての承認内容によります。ただし、制汗成分そのものを配合していない製品であれば、制汗という効能は表示できません。

子どもにも制汗剤・デオドラントは使える?

製品ごとに対象年齢や使用方法が定められています。子ども向けに販売されていない製品を自己判断で使用せず、公式サイトの使用対象・使用方法を確認し、心配な場合は医師に相談してください。

殺菌成分は肌に強い刺激がある?

個人差があります。肌が敏感な場合は、初めて使う製品は目立たない部分で試してから全体に使う、成分表示を確認してから選ぶといった対応がすすめられます。異常を感じたら使用を中止してください。

ミョウバンは昔からある制汗成分?

昭和36年の薬事法施行通知の段階で、腋臭防止剤の成分として焼ミョウバンや塩化アルミニウム、タンニン酸などの名称が挙げられています。制度の出発点から想定されていた成分といえます。ただし、個別の製品で有効成分として承認されているかどうかは、その製品の表示で確認してください。

制汗剤の「無香料」と「無添加」は違う?

違います。無香料は香料を加えていないことを指す表示で、対象が香料ひとつに限られます。無添加は何を添加していないかが製品ごとに異なり、アルコール・防腐剤・着色料などを指す場合があります。無香料であっても原料そのもののにおいは残るため、「においがまったくない」という意味ではない点にも注意が必要です。

スプレー・ロールオン・シートで区分は変わる?

形状で区分が決まるわけではありません。昭和36年の通知でも腋臭防止剤の剤型として液剤・軟膏剤・エアゾール剤・散剤・チック様のものが挙げられており、どの形状でも医薬部外品として承認され得ます。医薬部外品か化粧品かは、承認された有効成分を配合しているかどうかで決まります。

市販の制汗剤で足りない場合はどうすればいい?

汗の量が多く日常生活に支障が出る場合には、原発性局所多汗症として医療の対象になることがあります。日本皮膚科学会のガイドラインによれば、2020年以降、原発性腋窩多汗症に対する外用の医療用医薬品が国内で承認されています。市販品を買い替え続けるより、皮膚科で相談したほうが選択肢は広がります。

まとめ

制汗剤・デオドラントは「薬用」表示の有無で医薬部外品と化粧品に分かれ、ニオイそのものを抑える効能をうたえるかどうかがはっきり変わります。医薬部外品としての位置づけは薬用化粧品ではなく「腋臭防止剤」という独立した品目で、効能の範囲は「わきが(腋臭)、皮膚汗臭、制汗」に限られます。化粧品の効能56項目には汗にも体臭にも該当する項目がないため、化粧品のデオドラントは香りの範囲にとどまります。一方で成分表示は、腋臭防止剤が業界の自主基準の対象であるため全成分を確認できるのが実態で、薬用石鹸は日本石鹸洗剤工業会の別の自主基準で全成分表示が行われており、品目によって自主基準の担い手が違います。汗の量そのものが悩みなら医薬品という区分もある、という三層構造を踏まえて選ぶとよいでしょう。

シャンプーの法的分類はこちらの記事、薬用石鹸の全成分表示が別の団体の自主基準になっている話は石鹸の法律上の分類、カテゴリ別の「無添加」表示の法的根拠はこちらの早見表もあわせてどうぞ。

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出典(原文の確認日 2026年10月4日) 医薬品医療機器等法(薬機法)/厚生労働省「薬事法の施行について」(昭和36年2月8日付け薬発第44号)の医薬部外品の範囲および化粧品の効能の範囲(別表第1)/厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年7月21日付け薬食発0721第1号)/厚生労働省「いわゆる薬用化粧品中の有効成分リストについて」(平成20年12月25日付け薬食審査発第1225001号)/厚生労働省「薬用シャンプー及び薬用リンスの承認審査に係る留意事項について」(平成26年5月2日付け薬食審査発0502第1号)/厚生労働省「薬用石けんの承認審査に係る留意事項について」(平成30年3月29日付け薬生薬審発0329第13号)/日本化粧品工業会「医薬部外品の成分表示の趣旨説明」/日本石鹸洗剤工業会「医薬部外品(薬用石けん)の成分表示」/PMDA掲載の添付文書(エクロックゲル5%、ラピフォートワイプ2.5%の承認日)/日本皮膚科学会「原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版」/厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課長通知「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」(平成29年9月29日付け薬生監麻発0929第5号)別紙

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