「賞味期限」と「消費期限」、なんとなく違うものだとは分かっていても、正確な意味を説明できる人は多くないと思います。消費者庁の令和5年度「食品表示に関する消費者意向調査」でも、賞味期限の意味を正しく選べた人は約53%にとどまっています。「期限を過ぎたら即アウト」という思い込みで食品を捨ててしまっている場合もあれば、逆に消費期限を過ぎたものを賞味期限と混同して食べてしまう場合もあります。この記事では、消費者庁が公表している定義とガイドラインをもとに、2つの期限の違い、期限が設定される仕組み、開封後の考え方、食品ロスとの関係を整理します。
消費期限と賞味期限の定義

食品表示基準(食品表示法に基づく内閣府令)第2条は、この2つの期限を次のように定義しています。
消費期限 定められた方法により保存した場合において、腐敗、変敗その他の品質の劣化に伴い安全性を欠くこととなるおそれがないと認められる期限を示す年月日
賞味期限 定められた方法により保存した場合において、期待される全ての品質の保持が十分に可能であると認められる期限を示す年月日。ただし、当該期限を超えた場合であっても、これらの品質が保持されていることがあるものとする
期限設定の考え方をまとめた「食品期限表示の設定のためのガイドライン」は、平成17年に厚生労働省と農林水産省が策定したもので、令和7年3月28日に消費者庁が約20年ぶりに改正しました。改正後のガイドラインは、この定義を踏まえ、消費期限は微生物試験など安全性に関わる試験・検査の結果を優先して設定する期限、賞味期限は理化学試験や官能検査など品質に関わる試験・検査の結果を優先して設定する期限と整理しています。安全か品質かという、優先する観点そのものが違うということです。
「5日」で区別するという話は公式には否定されている
「日持ちが5日以内なら消費期限、それより長ければ賞味期限」という説明を見かけることがあります。これは期限表示が導入された平成7年に厚生省(当時)と農林水産省が通知した考え方ですが、用語の定義に基づいた期限設定とはいえないとして、平成20年に両省がすでに解消しています。消費者庁も現在この「5日」区分を推奨していません。
それでも現場には古い区分が残っていて、消費者庁がガイドライン改正に向けて行った事業者の実態調査では、定義を考慮せずに単に「5日」で区別している例が品目の約18%ありました。改正後のガイドラインは、定義に従い食品の特性を十分考慮したうえでどちらか一方を表示する必要がある、と改めて書いています。2つの期限を並べると次のようになります。
| 項目 | 消費期限 | 賞味期限 |
|---|---|---|
| 意味 | 安全に食べられる期限 | おいしく食べられる期限(品質が十分に保たれる期限) |
| 優先する試験・検査 | 微生物試験など安全性に関わるもの | 理化学試験や官能検査など品質に関わるもの |
| 表示される食品の例 | 弁当、調理パン、そうざい、生菓子類、生めん類など、品質が急速に劣化しやすい食品 | スナック菓子、即席めん類、缶詰など、品質の劣化が比較的穏やかな食品 |
| 表示の単位 | 年月日(必要に応じて時間まで) | 年月日。製造から期限まで3か月を超えるものは年月でも可 |
| 過ぎた後の扱い | 安全性を欠くおそれがあるため食べない | すぐに食べられなくなるわけではない。状態を確認して判断する |
| 前提条件 | どちらも未開封で、表示された保存方法を守った場合の期限 | |
誰が、どうやって期限を決めているのか
期限の設定と表示は、原則としてその食品を一番よく理解している事業者、つまり輸入食品以外は製造業者・加工業者・販売業者、輸入食品は輸入業者が、自らの責任で行います。品目横断的な統一ルールはなく、事業者が食品の特性、品質変化の要因、原材料の衛生状態、製造・加工時の衛生管理、容器包装の形態、保存状態などを踏まえて、微生物試験・理化学試験・官能検査といった客観的な項目(指標)を科学的・合理的に自ら決定します。
ここで出てくるのが安全係数という考え方です。試験・検査から得られた期限に対して、1未満の係数(安全係数)をかけたり、特定の日数を差し引いたりして、実際に表示する期限を決めます。改正前は食品表示基準Q&Aで「0.8以上を目安に設定することが望ましい」とされていましたが、実態調査では0.8未満に設定している品目が約40%あり、加圧加熱殺菌したレトルトパウチ食品や缶詰にまで安全係数をかけている例も見つかりました。期限を必要以上に短くしないよう、改正では「0.8」という目安の提示が見直されています。改正後のガイドラインは「安全係数は1に近づけ、差し引く日数は0に近づけることが望ましい」としつつ、微生物が増殖する可能性や品質のばらつきが大きい食品には、その特性に応じた安全係数の設定が必要だとしています。逆に、加圧加熱殺菌しているレトルトパウチ食品や缶詰のように、微生物の増殖が抑えられ品質のばらつきが少ない食品では、安全係数を考慮する必要がない場合もあるとされています(レトルト・缶詰の保存の仕組みはレトルト・缶詰はなぜ保存料なしで日持ちするのかで扱っています)。
賞味期限は「年月日」と「年月」、どちらもある
賞味期限を表示すべき食品のうち、製造日から賞味期限までの期間が3か月を超えるものについては、「年月」までの表示(日を省略した表示)が認められています。3か月以内のものは「年月日」まで表示する必要があります。
年月で表示する場合、期限はその月の月末までと解釈されます。そのため、本来の期限の日付が属する月ではなく、前月を表示するのが決まりです。ガイドラインのQ&Aでは、品質保持期間が100日の食品を4月10日に製造した例が挙げられています。期限は7月18日になりますが、「7月」と書くと7月31日まで延びてしまうので、18日を切り捨てて「6月」と表示します。期限がちょうど月末に当たる場合だけは、その月をそのまま表示できます。
| 年月日で設定した賞味期限 | 年月で表示する場合 |
|---|---|
| 令和7年4月10日 | 令和7年3月 |
| 令和7年4月30日(月末) | 令和7年4月 |
年月表示は表示ルールの話にとどまらず、食品ロス削減の手段としても後押しされています。この点は後半の「期限表示と食品ロスの関係」で触れます。
開封したら期限は関係なくなる
ここが誤解されやすいポイントです。消費期限も賞味期限も、容器包装を開封する前の状態で、表示されている保存方法に従って保存した場合の期限です。開封すると雑菌が混入したり酸素に触れたりして品質が急速に劣化するため、期限内であっても安全に食べられるとは限りません。開封後はなるべく早く食べる、というのが消費者庁の案内です。
また、常温保存が前提の食品では、常温で保存できる旨の表示自体が省略されていることがあります(牛乳・乳飲料を除く)。これは「表示がないから常温保存できない」という意味ではなく、常温保存以外に留意すべき特段の事項がないために省略されている場合がある、という理屈です。開封後に冷蔵が必要になる食品もあるため、「開封後要冷蔵」などの個別の表示があれば、そちらに従います。
賞味期限切れ=即廃棄ではない
ガイドラインは、賞味期限を過ぎた食品でも必ずしもすぐに食べられなくなるわけではないと明記し、消費者自身が状態を確認し、十分加熱するなど調理法を工夫することで、食品の無駄な廃棄を減らすことも重要だとしています。事業者側にも、消費者から期限設定の根拠を求められた場合にはウェブサイトへの掲載などで情報提供に努めることや、賞味期限を過ぎてもまだ食べられる食品については目安の情報や調理法の工夫も併せて提供することが望ましい、という記載があります。ただし、これはあくまで賞味期限の話です。消費期限を過ぎた食品は安全性を欠くおそれがあるため、食べてはいけないとはっきり区別されています。
ガイドラインは、期限の意味が伝わるように用語へ説明を添える表示も適切だとしており、次のような例を挙げています。特に賞味期限には説明を付けることが望ましいとされています。
消費期限(期限を過ぎたら食べないようにしてください。)
賞味期限(おいしく食べることのできる期限です。)
賞味期限(期限を過ぎても、必ずしもすぐに食べられないということではありません。)
期限表示と食品ロスの関係
ガイドラインが見直された背景には食品ロスの問題があります。農林水産省と環境省が令和8年6月30日に公表した推計では、2024(令和6)年度の食品ロス量は461万トンでした。前年度の464万トンから3万トン減っていますが、内訳を見ると家庭系が233万トンから224万トンに減った一方、事業系は231万トンから237万トンに増えています。
| 区分 | 2023(令和5)年度 | 2024(令和6)年度 |
|---|---|---|
| 食品ロス量(合計) | 464万トン | 461万トン |
| 事業系 | 231万トン | 237万トン |
| 家庭系 | 233万トン | 224万トン |
事業者側のロスにつながる商慣習としてよく挙げられるのが「3分の1ルール」です。賞味期間を3等分し、最初の3分の1までに小売店へ納品するという慣例で、この期限に間に合わなかった商品は、賞味期限まで日数が十分残っていても行き場を失い廃棄される可能性があります。農林水産省と経済産業省は2017年に、飲料と賞味期間180日以上の菓子を推奨品目として、納品期限を3分の1から2分の1に見直すよう呼びかけました。
農林水産省によると、令和7年10月時点で納品期限を緩和している(または予定している)食品小売事業者は377事業者です。製造側では、賞味期限を年月のみの表示にしたり、日を10日単位にそろえたりする「大括り化」に取り組む事業者が365、賞味期限の延長に取り組む事業者が393となっています。日付が1日違うだけで店に納品できず廃棄される、という事態を減らすのが大括り化のねらいです。
よくある質問
消費期限と賞味期限、結局どちらが「安全に関わる」期限ですか
消費期限です。消費期限は腐敗・変敗による安全性の劣化を基準に設定される期限で、これを過ぎた食品は食べないよう案内されています。賞味期限はおいしく食べられる期限で、安全性そのものを区切る期限ではありません。
賞味期限が切れた食品を食べても大丈夫ですか
賞味期限は「おいしく食べられる期限」であり、過ぎても品質が保持されている場合があります。消費者庁も、期限を過ぎてもすぐに食べられなくなるわけではないとしたうえで、状態を自分で確認し、十分に加熱するなど調理法を工夫することを勧めています。ただし未開封かつ表示された保存方法を守っていたことが前提で、見た目やにおいに異常があれば食べないでください。
製造年月日が表示されないのはなぜですか
かつて製造年月日の表示が義務でしたが、保存技術の進歩で製造年月日だけでは日持ちの判断がつきにくくなったこと、製造年月日表示が返品や廃棄を増やしていたこと、国際規格との調和が求められたことなどから、平成7年に期限表示への転換が始まり、平成9年4月に完全に切り替わりました。事業者が任意で製造年月日を併記することは可能です。
開封した食品は、賞味期限内なら安心して食べられますか
いいえ。消費期限・賞味期限はいずれも未開封の状態を前提にした期限です。開封後は雑菌の混入や酸化で品質が急速に劣化するため、期限内であっても早めに食べきる必要があります。
賞味期限を「年月」までしか表示していない商品がありますが、省略していいのですか
製造日から賞味期限までが3か月を超える食品については、年月までの表示(日の省略)が食品表示基準で認められています。3か月以内の食品は年月日まで表示する必要があります。
期限が近い商品を安く買うのは体に良くないということですか
期限そのものの安全性は変わりません。消費期限内・賞味期限内であれば、期限までの日数が短いことと安全性・品質は別の話です。むしろ食品ロスを減らす観点では、期限が近い商品を選んで早めに使い切ることは有効な行動とされています。
「無添加」だから期限が短い(長い)ということはありますか
添加物の有無だけで一律に決まるものではありません。期限は微生物試験・理化学試験・官能検査などの結果と、保存方法、容器包装の形態などを総合して事業者が個別に設定します。保存料を使わない食品が短い期限になりやすい傾向はありますが、加圧加熱殺菌など製法自体で長期保存を実現している食品(レトルト・缶詰など)もあり、添加物の有無だけでは判断できません。消費者庁の検討会の取りまとめ(令和7年3月)も、期限の延長は温度管理のほか、pHや水分活性の調整、酸素や光を遮る包材、添加物の使用などで実現できると整理しています。期限の長さは安全性の高さや低さを直接示すものではありません。
まとめ
消費期限は「安全に食べられる期限」、賞味期限は「おいしく食べられる期限」です。どちらも未開封で、表示された保存方法を守った場合の期限であり、開封後は期限にかかわらず早めに消費する必要があります。「5日」で機械的に区別する考え方は公式にはすでに解消されており、事業者が食品ごとの特性を踏まえて科学的・合理的に設定しています。賞味期限は過ぎても食べられる場合があるという理解を持ちつつ、消費期限は安全に関わる期限として区別して扱うことが、廃棄を減らしながら安全を確保する基本になります。原材料表示の読み方は原材料表示、どこから読めばいいのか迷ったときの見方、添加物の役割は保存料・着色料・化学調味料、それぞれ何のために使われているのかもあわせてご覧ください。
一人暮らしでの買い方・保存の工夫は一人暮らしで無添加を続けるための買い方と保存もあわせてどうぞ。
出典
消費者庁「食品期限表示の設定のためのガイドライン」(令和7年3月28日改正、Q&Aを含む) PDF
消費者庁「食品期限表示の設定のためのガイドラインの見直し検討会 取りまとめ」(令和7年3月) PDF
食品表示法に基づく食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)第2条
消費者庁「2024(令和6)年度食品ロス量推計値の公表について」(2026年6月30日) ページ
農林水産省「商慣習検討」(納品期限緩和・賞味期限表示の大括り化の取組事業者数、令和7年10月時点) ページ
消費者庁「令和2年版消費者白書」第1部第2章第2節(納品期限の推奨品目) ページ
数値・制度は2026年10月1日時点で確認した内容です。